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辺野古の美ら海を守ろう

〜市民団体が防衛省交渉&院内集会〜


図2-1

 沖縄県民の多数が反対しているもかかわらず、防衛省は辺野古新基地の建設を強行している。2017年11月、埋め立て予定海域の南西側(辺野古側)で新たな護岸工事に着手した。沖縄本島最北端の国頭村の奥港から辺野古への石材の海上搬送もはじめた。工事場所では絶滅危惧種のオキナワハマサンゴと準絶滅危惧種のヒメサンゴも発見されている。そこで国際環境NGO「FoE Japan」と「美ら海にもやんばるにも基地はいらない市民の会」は2017年12月13日、参議院議員会館で防衛省と交渉し、工事の問題点を指摘しながら新基地建設の中止を求めた。参加者は約150人。
 

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辺野古新基地建設工事の問題点を指摘し、防衛省(左)に基地建設中止を要請=2017年12月13日、参議院議員会館
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防衛省交渉の前にひらかれた院内集会

◆本来の工程を無視

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北上田毅さん
写真1-4
山城博治さん

 交渉に先だってひらかれた院内集会では、沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんと沖縄平和運動センターの山城博治さんが護岸工事や石材海上輸送の問題点、違法性などをあきらかにした。
 北上田さんはこう話した。
 「沖縄防衛局は辺野古側のK1護岸とN5護岸の工事をどんどんすすめている。これは本来の工程とまったく変わっている。本来の工程は大浦湾のA護岸からはじめるはずだった。ところが岩礁破砕の問題をめぐって沖縄県が工事差し止め訴訟を起こしたため、防衛局は岩礁破砕工事を控えている。そのかわりに、本来の工程をまったく無視し、やりやすいところから手をつけている。この工程変更は、埋め立て承認のさいの留意事項にもとづき知事の承認が必要である。だが、防衛局はこうした難問の処理を後回しにしたまま工程を全面的に変更した。辺野古側でも護岸工事がどんどんすすんでいるので反対してももうおいつかない。そういうかたちで沖縄県民のあきらめを誘おうとしている」
 「現場の海域では、カヌー隊が懸命の工事阻止行動をおこなっている。しかし、あたり一面にフロート(浮具)が何重にもはられていて、中になかなか入れない。入ったとしても、海上保安庁が待ちかまえている。カヌー1隻にたいして5、6人乗った海保のボートが向かう。このように、阻止行動はたいへんきびしい状況がある。それでもみんながんばっている。カヌーをこいで懸命に阻止行動をつづけている」

◆ジュゴンなどに影響

 集会のあとは防衛省交渉である。防衛省は、新基地建設工事に用いる石材の海上輸送をはじめた。沖縄本島最北端の国頭村奥港から大浦湾への北回りルートである。その輸送量は、防衛省の方針では一日に台船1隻約700立方メートル、10トンダンプ約160台分である。
 このルートの海域では、ジュゴンやウミガメがひんぱんに確認されている。防衛省の発表でも、昨年8月25日から9月30日にかけて、ジュゴンの鳴き声が197回も確認されている。この海域で石材を積んだ台船の走行がつづくと、ジュゴンなどに大きな影響をあたえる。
 この点について、防衛省は「ウミガメ類やジュゴンがひんぱんに確認されている区域内をできるかぎり回避する」「沖縄島沿岸を航行する場合は岸から10キロ以上離れて航行する」「ジュゴンとの衝突を回避できるような速度で航行する」の回答をくりかえした。
 防衛省は、海上輸送の目的として環境負荷の軽減や作業効率の向上をあげている。
 北上田さんは、「11月に奥港から台船で石材を運搬したさいは、ダンプ50台分の陸揚げをするのに1日かかっている」と指摘した。海上輸送は作業効率の向上にもならないうえ、国頭村の奥港が海上輸送に使われることから同村奥地域の静かな環境を破壊して環境負荷を増大させる、と強調した。海上運搬のための奥港使用に反対する決議を国頭村奥区があげていることにふれ、「海上搬送はやめるべき」と防衛省にせまった。

◆活断層も無視

海底断面図

 埋め立て予定の海域には、活断層の可能性のある断層が存在している。それは、防衛庁(現・防衛省)が2000年に作成した資料であきらかにされている。琉球大学の加藤祐三名誉教授(地質学)は、「海底に活断層が走っている可能性がある」「いかにしっかりした基礎工事をしても直下で活断層が動き地盤がずれれば、上にある施設は破壊される」と指摘している(『琉球新報』2017年10月25日)。
 また、名護博物館の『名護・やんばるの地質』と東京大学出版会の『新編 日本の活断層』も、活断層の可能性を指摘している。
 ところが防衛省は、「既存の文献などでは沖縄県北部において目立った活動は確認されていないことから、辺野古沿岸域に活断層が存在しているとは認識していない」の回答に終始した。防衛省が根拠とする「既存の文献など」には『名護・やんばるの地質』と『新編 日本の活断層』は含まれていない。防衛省自身が作成した2000年の資料も無視である。

◆「搬入土砂の高温処理を試験中」

 防衛省は交渉のなかで、埋め立てに用いる西日本各地からの土砂搬入の外来生物侵入防止対策として、高温処理を施してセアカゴケグモとアルゼンチンアリの生死判定試験をおこなっていることをはじめてあきらかにした。埋め立てには約2100万立方メートルの土砂が必要とされている。北上田毅さんは「すべてを高温処理するには膨大な時間と費用がかかる」と指摘した。
 交渉後のまとめでは、山城博治さんがこう訴えた。
 「2100万立方メートルの土砂のうち畳1枚分ぐらいの土砂にドライヤーみたいなもので100度の熱をくわえたら外来生物はすべて死んだ。だからOKである。そのような議論にされかねない。膨大な量の搬入土砂の外来生物侵入対策をどうするかという議論をつめよう。そのことを地元の県知事などに伝え、無害の土砂を沖縄に搬入することは不可能ということを訴える。そして、全国各地から土砂を沖縄に搬送することをやめさせる。そのような運動をすすめましょう」

(JAWAN通信 No.122 2018年2月20日発行から転載)

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