日本の湿地を守るために
〜日本湿地ネットワークが船橋市で総会とシンポ〜
日本湿地ネットワーク(JAWAN)は2018年3月31日、千葉県船橋市で定期総会とシンポジウムをひらきました。
総会では、日本の湿地がいまも減少・劣化傾向にあることや、全国各地の湿地保護運動を支援したり連携を強めたりすることの大切さを確認しました。
日本では近年、経団連(日本経済団体連合会)や行政による自然保護団体の取り込みが強まっています。財界の総本山である経団連は、2016年度までに37億円を自然保護団体に助成しています。年間約1億5000万円です。
その手法は、経団連のなかに経団連自然保護基金という名の組織を設け、会員企業(大企業)から寄付金をつのる。そして、経団連の意に沿った自然保護団体に資金を提供するというものです。資金援助に協力している大企業のなかには、自然破壊の公共土木工事を手がけている大手ゼネコンも含まれます。鹿島建設、清水建設、大成建設、大林組です。この4社は、リニア中央新幹線の建設工事をめぐり不正受注調整をおこなったとして起訴されました。東芝、日立製作所などの原発メーカーも資金を提供しています。デベロッパー(開発業者)の三井不動産も経団連の資金援助に協力です。同社は東京湾の干潟を埋め立てまくって広大な埋め立て地をただ同然で手に入れ、その転売で暴利をむさぼりました。
大手ゼネコン、原発メーカー、デベロッパーなどから巨額の資金援助を得ている団体には湿地関係団体も含まれます。ラムサール・ネットワーク日本(ラムネット)や日本国際湿地保全連合などです。
たとえばラムネットの2016年度決算をみると、収入合計は約1574万円です。そのうち、財界や行政関係団体などからの助成・委託費は1463万円です。じつに収入の93%を助成・委託費が占めています。経団連からラムネットへの資金援助はこうなっています。2010年度400万円、2011年度280万円、2012年度360万円、2013年度312万円、2016年度102万円。
経団連は自民党政権を支えながら、自然破壊の大型公共土木事業や原発再稼働などを政府や自治体に推進させています。そんな経団連から多額の財政支援を得る団体は、環境破壊の公共事業や原発建設を阻止できません。それは事実が示しています。
たとえば日本の原発建設は17カ所(54基)です。これにたいし、原発を建設させなかった地域は34カ所もあります。新潟県の巻町(新潟市西蒲区)、石川県の寺家・高屋(珠洲市)、福井県の小浜市などです。こうした運動で原発メーカーや財界団体などから資金援助をうけたものはひとつもありません。すべて手弁当の住民運動です。環境破壊の開発や公共土木事業を止めた運動もおなじです。
三番瀬フォーラムグループは、大企業や行政から多額のカネをもらいだしてから姿勢が大きく変わりました。三番瀬の埋め立てについては反対から賛成に転換です。三番瀬のラムサール条約登録に反対する意見書も知事に提出するようになりました。
経団連や行政による財政援助は麻薬とおなじです。資金援助に頼るようになると、会費収入だけではやっていけなくなります。原発立地自治体が原発マネーへの依存から脱却できなくなるのとおなじです。
そういうなかで、財界や行政から自立し、日本の湿地を守るために自由な立場で活動をつづけているJAWANの存在はたいへん重要です。日本の湿地保全運動の伝統を保持し、発展させることを総会で確認しました。
「日本の湿地を守ろう 2018」と題したシンポジウムでは、法政大学人間環境学部の高田雅之教授が「湿地の恵みを考える」、アジアの浅瀬と干潟を守る会の山本茂雄さんが「日本に出回るアサリと潮干狩りをめぐる実情」と題して講演したあと、各地の報告などがおこなわれました。
会場の船橋市男女共同参画センター研修室は超満員です。第1会議室では、地元の「三番瀬を守る会」が三番瀬の生き物の写真などを展示しました。
翌4月1日は三番瀬の現地見学会です。千葉県野鳥の会などが主催する定例の三番瀬自然観察会に合流しました。参加者は70人です。野鳥は35種類を確認しました。スズガモ1万羽、ハマシギ2000羽、ユリカモメ500羽、ミヤコドリ300羽、セグロカモメ80羽などです。
>> トップページ >> REPORT目次ページ