都市の水辺をフィールドとした学習活動
中村美月さん
法政大学人間環境学部は、人間と環境をキーワードとして、「横断的な学習」「現場から学ぶ」「教養ある豊かな人間性づくり」を通して「持続可能な社会」について考え実践する力を養うことをめざしている。
高田ゼミでは、人間と生態系との関係を文系と理系の両面からさまざまな視点で考究することをテーマとしている。さらに学生自身が企画・実践し、成果をまとめる自主的な課外活動(サブゼミ)として、都市と自然との関わりを探求する活動を2016年度からすすめている。
現在のゼミ生は、2つのゼミあわせて70人(2〜4年)である。各ゼミが「緑地」「里山・都市農業」「水辺」「生き物文化」「生物調査」「東京湾と川」の6つの班に分かれてテーマ別に活動している。そのなかから、皇居内濠における水鳥調査と、三番瀬干潟での生物調査に関する活動の一部について報告する。
皇居内濠の水鳥を毎冬観察・調査している。調査方法は、水鳥を対象とし、種別の個体数をカウントして濠ごとに集計している。
冬期間の確認種数は概ねここ数年一定で、濠によって種数が異なる傾向がみられた。観察種数は23種である。冬期間の個体数はここ数年一定で、濠によって、また種によって個体数が異なる傾向がみられた。
「三番瀬市民調査の会」は、三番瀬の浦安寄りに位置する猫実川河口域のカキ礁とその周辺干潟において、2003年から調査を継続的に実施している。私たちは2013年3月以降、のべ16回にわたって毎回数人ずつ調査に参加させてもらっている。干潟の現場と生物を間近で観察し学習する貴重な機会をいただいている。
三番瀬市民調査の会がこれまで調査した生物種に関するデータから、継続的な確認がされているとみなせる80種を会の方に選定していただき、それらのデータをお借りして集計分析を試みた。
三番瀬は、2011年春の東日本大震災によって干潟の地盤が20〜30cm沈下したとされている。年変化パターンのうち、震災時期を境に変化したとみなせる4つのパターン(震災で一時増加、震災で一時減少、震災以降増加、震災以降減少)について、それぞれ4種、1種、11種、5種の生物を選定することができた。これらは、震災の影響を受けた可能性のある種と考えられ、文献などをもとに生息環境、繁殖時期、餌などに共通点がないかを調べ、市民調査の会のご意見もいただいて考察した。
またアナジャコに注目して、震災後の変化を分析した。干出の有無、アナジャコの確認の有無、アナジャコの1㎡あたりの巣穴数である。分析の結果、震災後4〜5年間はアナジャコの生息個体数に大きな影響がおよんだと推定された。しかし回復不能となるほどの致命的な影響にはいたらず、2016年以降徐々に回復の兆しがみられる。ほかの干潟生物を含め、今後の継続的な調査がいっそう重要であると考える。
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