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■シンポジウム「日本の湿地を守ろう2018」の報告要旨

中池見湿地における北陸新幹線問題の現況

NPO法人ウエットランド中池見 笹木智恵子さん

 中池見湿地は「水がいのち」の場所である。中池見というと、生物の多様性が喧伝されているが、これは副次的なものであって、健全な生息・生育場所があっての生き物たちである。
 また、中池見の真髄とベースは、見えないところにある「世界屈指の厚さを誇る泥炭層」であることを忘れてはならない。水環境に変化があると、この泥炭層にどのような影響が出るかが不明である。それだけに、大きな懸念材料となっているのが北陸新幹線のトンネル掘削計画である。
 国交大臣認可の「変更ルート」は、湿地に水を供給する重要な地域として登録された集水域内であるとともに、湿地本体とは異なる生態系を持つ後谷の消滅である。このルートは、ラムサール条約事務局や国内外の自然保護団体などの支援もあってとりやめ、位置をずらすことができた。
 しかし私たちが心配しているのは、トンネルを掘削すると、周辺地域の表流水の減少、井戸の水位低下・枯渇、トンネル内への出水など、水文学的な各種影響が派生することである。水環境の変化は避けて通れない事象である。
 いよいよ深山トンネルの掘削準備がはじまった。トンネル掘削は、敦賀側の大蔵から掘り進めるという。掘削は8、9月頃からを予定しているというが、諸般の事情で着工は遅れそうな状況にある。
 樫曲側の入口は標高67mと深山の中腹近くになる。ここまでの工事用道路の工法についてはまだ検討中とのことである。私たちは、環境破壊の少ない工法を求めた。
 これら工事の影響や結果は10年先、20年先しかあらわれないだろう。中池見湿地のいのちである“地下水環境”に変化のないことを祈りながら現場へでかけ、変わりゆく姿をモニタリングし、記録しつづけている。

(JAWAN通信 No.123 2018年5月20日発行から転載)

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