第二東京湾岸道路を25年間阻止
〜それでもあきらめない国交省と千葉県〜
第二東京湾岸道路は三番瀬を通ることになっている。三番瀬は東京湾奥部最大の干潟である。三番瀬保全団体は多彩な運動をくりひろげ、この道路の建設を25年間くいとめてきた。しかし千葉県と国交省はあきらめない。2018年3月、千葉の湾岸地域で新たな高規格道路を建設することの検討をはじめた。そこで三番瀬保全8団体は4月17日、国交省千葉国道事務所・県道路計画課と交渉し、検討内容を質した。
◆25年にわたる攻防
第二東京湾岸道路は首都圏高規格道路ネットワーク構想に位置づけられている。千葉側では、浦安市、船橋市、習志野市、千葉市の埋め立て地に8車線の道路用地が確保されている。しかし、三番瀬を通るルートがきまらないために建設できない。
三番瀬を通る第二東京湾岸道路が具体化したのは1993年である。同年3月、千葉県は三番瀬の埋め立て計画を発表した(図2)。埋め立て地のど真ん中に第二湾岸道路を通す計画である。
三番瀬保全団体は「東京湾をこれ以上埋め立てるな」という運動をはじめた。運動の高まりにより、県は1999年6月に埋め立て計画を見直した。埋め立て面積を740haから101haへ大幅に縮小するものであった(図3)。
図をみれば明らかなように、見直し計画は第二湾岸道路を三番瀬に通すことが主な目的である。埋め立て反対運動はますます高まった。「三番瀬を第二の諫早湾にするな」という声が高まった。埋め立て計画の白紙撤回を求める署名は最終的に30万に達した。
2001年春の県知事選では三番瀬埋め立てが最大の争点になった。選挙中に朝日、読売、毎日の新聞各紙がおこなった県民世論調査では、いずれも「埋め立て反対」が過半数を占めた。そして三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を唯一の公約に掲げた候補者が当選した。
2001年9月、三番瀬埋め立て計画は白紙撤回となった。県はその後、市川側の猫実川(ねこざねがわ)河口域で人工干潟を造成する計画をうちあげた。目的は、この海域に第二湾岸道路を沈埋(ちんまい)方式で通すことである(図4)。
三番瀬保全団体は、人工干潟造成と第二湾岸道路建設を阻止するためにさまざまな運動をくりひろげた。県議会の野党議員にも支援をいただいた。人工干潟造成をめぐる攻防は15年つづいた。そしてついに2016年10月、県は人工干潟造成計画を中止した。第二湾岸道路の建設もくいとめた。
◆新規臨港道路構想も断念
だが、県は第二湾岸道路の建設をあきらめない。2017年1月、県は千葉港長期構想を策定した。同構想には新規臨港道路が盛りこまれている(図5)。千葉市、習志野市、船橋市の埋め立て地に確保されている第二湾岸道路用地と外環道(東京外かく環状道路)をつなぐ道路を建設するというものである。
この臨港道路ができれば、猫実川河口域に第二湾岸道路を通す計画が復活するかもしれない。そのため、三番瀬保全団体は新規臨港道路構想を批判した。地元船橋市の丸山慎一県議も県議会の代表質問などでこの構想をきびしく批判した。
丸山県議は代表質問でこう主張した。
「港の整備にかこつけて、事実上、第二湾岸道路の建設が動きだすようなことはあってはならない」
「巨大な橋を2本もかければ事業費が数千億円単位になる。不要不急の大規模開発は見直し、暮らしや福祉、教育を中心に税金を使うべきである」
丸山県議は、港湾計画などを審議する千葉県地方港湾審議会の委員もつとめている。
この年の10月19日、県地方港湾審議会千葉港幹事部会がひらかれ、千葉港の港湾計画改訂案を県が提示した。改訂案に新規臨港道路は盛りこまれなかった。港湾計画は、港湾法にもとづいて10〜15年後の港湾の姿を描くマスタープランである。
県は、新規臨港道路の建設を具体的な法定整備計画(港湾計画改訂)に盛りこむことを断念した。
◆新たな道路網計画を検討
それでも県と国交省は第二湾岸道路の建設をあきらめない。
2018年4月2日の『千葉日報』が「新たな道路網計画検討」を報じた。慢性的な交通渋滞対策として、国交省千葉国道事務所が湾岸地域で新たな道路ネットワークを検討しているというものである。県の道路計画課も新たな自動車専用道路の必要性を強調しているという。
そこで、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る会、市川三番瀬を守る会などの三番瀬保全8団体は4月17日、国交省千葉国道事務所と県道路計画課を相手に交渉した。千葉国道事務所と県は、「湾岸地域における新たな自動車専用道路」が第二湾岸道路であることを否定しなかった。
湾岸地域を走る国道357号では、県平均の3倍以上の渋滞損失時間が連続的に発生しているという。また、渋滞によって湾岸地域に立地する企業が物流の効率性を阻害されているという。
しかし、千葉国道事務所が提示した資料によれば、国道357号の道路改良によって渋滞が緩和されたところもある。連続する交差点における右左折レーン設置(船橋地区)、車線増設(千葉地区)、地下立体化(同)などである。千葉地区では車線増設や地下立体化によって並行市道の交通量が約2割減少した。時間信頼性が向上したため、新たなバス路線も運行を開始した。
8団体はこんなことを主張した。
「湾岸地域の立地企業は道路渋滞も前提のうえで営業している。渋滞が解消されなかったら会社がつぶれるという話はきいたことがない。国や県の財政が危機的状況におちいっているなかで、莫大な費用がかかる第二湾岸道路をつくるのはやめるべきだ。環境への影響も大きい。右左折レーン設置や地下立体化などの道路改良が渋滞緩和で大きな効果を発揮している。こうした道路改良を今後もすすめてほしい」
>> トップページ >> REPORT目次ページ