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東京都初のラムサール条約登録

─葛西海浜公園 2018年10月─

田久保晴孝
(日本湿地ネットワークアドバイザー、
三番瀬を守る署名ネットワーク代表、日本野鳥の会東京幹事)

 2018年10月、ドバイでひらかれた第13回ラムサール条約締約国会議(COP13)において葛西海浜公園(367ha。西なぎさを除く)がラムサール条約湿地に登録された。東京都で初めての登録である。
 地元の葛西東渚・鳥類園友の会(飯田陳也会長)や日本野鳥の会東京(東良一代表)などが地道で力強い活動をすすめ、江戸川区とともに運動した結果としてラムサール条約湿地に登録された。私も活動団体の一員としてうれしいかぎりである。
 ラムサール条約登録により、干潟や浅海域の重要性について市民の認識が高まり、大都市の近くにある葛西のすばらしい自然・水鳥がたくさんの市民に注目され、保全されると思う。

図3-1

葛西臨海公園・葛西海浜公園

 いまから50年前、東京都海上公園は、美濃部亮吉都知事のもと、日本野鳥の会などの協力を得て計画され造られた。海上公園の一つとして、水鳥などの生きものと市民のために葛西海浜公園・葛西臨海公園が造られた。

写真3

葛西臨海公園 約80ha 1988年開園

 林(数万本の樹木)、草原、葛西臨海水族園、鳥類園(淡水池・汽水池)などがある。年間320万人の市民が利用している。三枚洲(干潟)を埋め立てて造られた。

葛西海浜公園 412ha 1988年開園

 ◇西なぎさ
 人が利用する砂浜と人工干潟。砂浜・草原で絶滅危惧種のコアジサシ、シロチドリ、ヒバリが繁殖。都内では数少ない海と触れあえる場所として、市民によく利用されている。
 ◇東なぎさ
 水鳥が利用する人工干潟(立ち入り禁止の保護区)。アシ原、湿地、干潟などがあり、シギ、チドリ、カモメ、カモ、サギ、カワウなどたくさんの水鳥が利用(採餌・休息)。東なぎさの東側の外には都内一のカキ礁がある。
 ◇高洲
 三枚洲の一部。東なぎさの南に干出する天然の干潟と浅海域。干出時に、シギ、チドリ、カモメなどが採餌・休息として利用。冬期は、スズガモ、カンムリカイツブリなどが採餌・休息に利用。
 葛西海浜公園は、生物生産性・生物多様性の高い干潟や浅海域が都内で唯一広く残されているため、都内一であるとともに、全国有数の水鳥の渡来地になっている。

オリンピックとラムサール登録

 2008年、葛西臨海公園の20%(20ha)をつぶして2016東京オリンピック・カヌースラローム競技施設を造る計画を東京都が発表した。この計画に対し、葛西東渚・鳥類園友の会らは「緑が育ち、都心の貴重で豊かな自然を守れ」と建設に反対し、臨海公園に隣接する都下水処理場用地などに変えるよう運動した。継続的な反対運動などにより2014年6月、2020東京オリンピック・カヌースラローム競技用地は都の下水処理場に変更され、現在建設中である。
 この運動によって地元の江戸川区や東京都(港湾局)、都民・マスコミが葛西の自然に注目するようになり、ラムサール条約湿地登録運動が一気に盛りあがった。そして葛西海浜公園はラムサール条約湿地に登録された。
 ラムサール条約湿地登録運動を長く続けている三番瀬も、行政、マスコミ、市民、自然保護団体などが協力・協同し、早期に三番瀬をラムサール条約湿地に登録してほしい。

図3-2
葛西海浜公園のラムサール条約登録範囲
(JAWAN通信 No.125 2018年11月30日発行から転載)

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