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第二東京湾岸道路の計画中止を求める

─三番瀬保全団体が国土交通省と緊急交渉─


第二東京湾岸道路は東京湾三番瀬を通ることになっている。三番瀬保全団体は、この道路の建設を1993年以来26年くいとめてきた。しかし国土交通省と千葉県はあきらめない。2019年1月17日、第二湾岸道路の建設にむけた検討会の設置を石井啓一国土交通大臣が表明した。そこで三番瀬保全団体は2月4日、国交省と緊急交渉をおこなった。

国交省は「検討会はなにもきまっていない」としながら、検討会の準備をすすめていることをあきらかにした。また、「三番瀬をつぶして第二湾岸道路を建設しようと考えているわけではない」と答えながら、「必要があれば新たな道路も検討したい」とのべた。

◇     ◇

図1-1

三番瀬を通る第二湾岸道路計画が浮上したのは1993年3月である。第二湾岸道路をもりこんだ三番瀬埋め立て計画(市川二期地区・京葉港二期地区計画)を千葉県が発表した。署名を30万集めるなど世論を味方につけた運動によって、埋め立て計画は2001年9月に白紙撤回となった。第二湾岸道路計画も中止になった。

その後、県は猫実川河口域の人工干潟計画をうちだした。この海域は三番瀬の浦安寄りに位置する。人工干潟造成の目的は、三番瀬再生という名目で人工干潟を造成し、そこに沈埋方式(ボックスカルバート方式)で第二湾岸道路を通すというものだ。この人工干潟造成計画も、三番瀬保全団体のねばりづよい運動によって2016年10月に中止となった。

それでも国交省と県はあきらめない。(2019年)1月17日、国交大臣が「第二湾岸道路建設に向けた検討会設置」の方針を表明した。

◆28人が参加。17人が発言

国交省と交渉したのは、三番瀬を守る連絡会、三番瀬を守る会、市川三番瀬を守る会、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県野鳥の会、県自然保護連合の7団体である。国交省は道路ネットワークを担当している道路局企画課が対応した。

交渉参加者は28人。うち17人が発言した。写真をみせながら三番瀬が水鳥の楽園となっていることを説明したり、道路交通量が減少していることをデータで示したりしながら、三番瀬を通る第二湾岸道路計画を中止するよう求めた。主なやりとりは以下のとおりである。

写真1-1
国土交通省の担当者(右)と交渉し、東京湾三番瀬を通る第二東京湾岸道路計画の中止を求める三番瀬保全7団体のメンバーなど=2019年2月4日、衆議院第二議員会館

◆「三番瀬をつぶして建設しようと考えているわけではない

検討会について国交省はこう答えた。

「高規格の道路ネットワークの必要性について検討が必要と考えている。しかし現時点では、どのような検討会を立ちあげるかという具体的なものはなにもきまっていない」

「第二湾岸道路のような個別のプロジェクトを検討するさいは、関東地方整備局や国道事務所といった、現場をよく知っている部署が事務局になってすすめることになる」

第二湾岸道路について、千葉県は「三番瀬の自然環境に十分配慮したかたちで実施する」「三番瀬再生計画との整合性を確保する」を県議会や三番瀬ミーティングなどで言明してきた。また、千葉県議会で可決された意見書にも「三番瀬再生計画と整合をとりながら」と記されている。第二湾岸道路を検討するさいは、こうした三番瀬の保全・再生計画や県議会の意見書を尊重すべき、と7団体は質した。国交省はつぎのようにのべた。

「三番瀬再生計画や三番瀬をめぐる経過などは国交省も十分に認識している。道路事業をすすめるさいは環境への配慮を基本にしている。第二東京湾岸道路を検討するさいも環境への影響に配慮する」

「第二湾岸道路を検討するさいは、当然のことながら千葉県と連携する。三番瀬再生計画にもとづいて三番瀬再生事業をすすめている県としっかり協議していくことになる」

「三番瀬に飛来する野鳥や貴重な底生生物などの写真をきょうみせていただいた。三番瀬が貴重な自然であることは、われわれも承知している。こうした三番瀬をつぶして第二湾岸道路を建設しようと考えているわけではない。環境に配慮しながらすすめるのは道路事業の基本だ。この場でみなさんからだされた意見を十分にふまえて検討させていただく」

◆都県境の道路交通量は減少

千葉県はかつて、第二湾岸道路の必要性として、臨海部の都県境(江戸川断面)における6路線(高速湾岸線、京葉道路、国道14号、国道357号、県道東京市川線、県道東京浦安線)の交通量が増えつづけることをあげていた。ところが道路交通センサスのデータをみると、実際の交通量は減少しつづけている。交通容量も下回るようになった。これについて国交省はこう答えた。

「そのデータはわれわれも確認した。しかし、渋滞が解消されている箇所もあるが、依然として渋滞が残っている箇所もある」


図1-2

◆「新たな道路も検討したい」

湾岸道路(国道357号)は、右左折レーン設置、車線増設、地下立体化などの道路改良が渋滞緩和で大きな効果を発揮している。7団体は「新たに第二湾岸道路を建設するのではなく、道路改良をどんどんすすめてほしい」と求めた。国交省はこうのべた。

「指摘のとおり、国交省はいろいろな対策をすすめている。それでも渋滞を解消できない場合は別の道路ネットワークを考えることも選択肢としてある。必要があれば新たな路線(道路)も検討したい」

国と地方の財政は天文学的な数字の借金をかかえ、危機的状況におちいっている。「莫大な費用がかかる第二湾岸道路を建設するのはやめるべき」と7団体は求めた。国交省はこう答えた。

「第二湾岸道路を建設する場合は多額の予算が必要になるということは、国交省も想定している。新たな道路を整備するときは、かかる費用にたいしてどのような効果があるのか、そしてどのような影響があるのか、ということを分析・評価をしたうえで事業をすすめている」

三番瀬保全団体は、第二湾岸道路の建設を止めるためにさまざまなとりくみをすすめることにしている。

写真1-2
浦安市の埋め立て地に確保された8車線の第二湾岸道路用地。三番瀬(奥に見える堤防の先)にぶつかる
写真1-3
千葉市の幕張メッセ(右)と千葉マリンスタジアム(左)の間に確保された8車線の第二湾岸道路用地。そのうち4車線(右側)が道路として使われている。
新聞記事1-1

質問事項

2019年2月4日

三番瀬を守る連絡会 代表世話人 中山敏則

三番瀬を守る会 会長 田久保晴孝

市川三番瀬を守る会 事務局長 谷藤利子

千葉の干潟を守る会 代表 近藤 弘

三番瀬を守る署名ネットワーク 代表 田久保晴孝

千葉県野鳥の会 会長 富谷健三

千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子

「第二東京湾岸道路の検討会設置」に関する質問事項

私たちは貴重な干潟・浅瀬の三番瀬を後世に残すために活動している団体です。

先月の18日と19日、「国交省が第二東京湾岸道路の検討会設置」を新聞各紙が報じました。報道によれば、石井啓一国土交通相は1月17日、「国が主体となって、第二湾岸道路を中心とした湾岸地区道路検討会を設置し、検討を加速したい」との方針を示したそうです。

そこで、第二東京湾岸道路に関する検討会設置について、下記のとおり質問させていただきます。

1.検討会の目標、開始時期、構成メンバー、開催頻度などを教えてください。

2.第二湾岸道路について、千葉県は「三番瀬の自然環境に十分配慮したかたちで実施する」「三番瀬再生計画との整合性を確保する」を県議会や三番瀬ミーティングなどで言明してきました。また、千葉県議会で可決された意見書にも「三番瀬再生計画と整合をとりながら」と記されています。

第二湾岸道路を検討する際は、三番瀬の保全・再生計画や県議会の意見書を尊重すべきと考えます。この点に関する国交省の認識や考えをお聞かせください。

〔参考〕

(1)千葉県が2006(平成18)年12月に策定した三番瀬再生計画(基本計画)

「三番瀬再生計画に含まれない三番瀬の自然環境に影響を与えるおそれのある事業の実施にあたっては、基本計画との整合性の確保に努めるとともに、県以外が実施するものについては、基本計画との整合性につき配慮を要請していきます」

(2)2011(平成23)年6月定例千葉県議会で可決された意見書(東京湾環状道路の早期整備を求める意見書。平成23年7月8日可決。宛先は国土交通大臣など)

「第二東京湾岸道路については、三番瀬再生計画と整合をとりながら、早期具体化を図ること」

3.千葉県はかつて、第二湾岸道路の必要性として、臨海部の都県境(江戸川断面)における6路線(高速湾岸線、京葉道路、国道14号、国道357号、県道東京市川線、県道東京浦安線)の交通量が増えつづけることをあげていました。

1999年11月に開かれた第4回「市川二期地区・京葉港二期地区計画策定懇談会」において、千葉県の県土整備部(当時は土木部)は次のように説明しました。1997年における1日あたりの交通量は45万7千台であり、交通容量(40万8千台)を4万9千台もオーバーしている。20年後(2017年)の交通量は59万4千台になると推定される。第二湾岸道路が未整備の場合は、20年後の交通容量不足は4万9千台から18万6千台へとさらにきびしくなる。したがって第二湾岸道路が必要である、と。

ところが、じっさいの交通量は減少しつづけています。2015(平成27)年度の6路線の交通量は38万8千台で、交通容量(40万8千台)を下回るようになりました。したがって、第二湾岸道路の必要性は薄れたと考えます。この点について国交省の認識と見解をお聞かせください。

4.国交省の関東地方整備局と千葉国道事務所が昨年3月13日に開催した「第8回千葉県湾岸地域渋滞ボトルネック検討WG(ワーキンググループ)」の資料によれば、国道357号は、右左折レーン設置、車線増設、地下立体化などの道路改良が渋滞緩和で大きな効果を発揮しています。また昨年5月29日の『千葉日報』によれば、京葉道路では、朝夕を中心に続く渋滞解消に向け、とくに混雑が顕著な上り線の幕張パーキングエリア─船橋料金所間で車線を追加する(2020年夏に運用開始予定)とのことです。

新たに第二湾岸道路を建設するのではなく、こうした道路改良をどんどん進めるべきと考えます。この点について国交省の見解を教えてください。

5.国や地方の財政は天文学的な数字の借金をかかえ、危機的状況におちいっています。こうしたなかで、莫大な費用がかかる第二湾岸道路を建設するのはやめるべきと考えます。この点について国交省の考えをお聞かせください。

〔参考〕

昨年12月22日の『東京新聞』はこう記しています。「平成の初めに約160兆円だった国の借金残高(債務残高)は今、約900兆円。地方分をあわせると1100兆円に達する」と。国民1人あたりでは、地方分をあわせると約870万円の借金をかかえていることになります。財務省のホームページに「債務残高の国際比較(対GDP比)」のグラフが載っています。日本の借金残高は断トツです。財務省は次のように書いています。

「日本の公債残高は、年々、増加の一途をたどっています。平成27年度末の公債残高は807兆円に上ると見込まれていますが、これは税収の約15年分に相当します。つまり将来世代に、大きな負担を残すことになります。また債務残高の対GDP比をみると、90年代後半に財政健全化を進めた先進国と比較して、日本は急速に悪化しており、最悪の水準になっています」

(JAWAN通信 No.126 2019年2月28日発行から転載)

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