石垣島の河川の特徴と
アンパルを中心とした生態系
藤本治彦さん
沖縄の河川が内地とちがうのは、下流域が発達せずに小さいことだ。それから中流域が2回出現する。平野部中流域と台地部中流域だ。途中に上流をはさみ、上と下に中流域が分かれている。そして汽水域が発達する。沖縄の河川にはそのような特徴がある。
石垣島の河川の特徴はこうだ。淡水域はあまり発達しない。大きい河川は名蔵川と宮良川だけで、小河川が多い。アンパルのような汽水域が発達している。石灰岩が地下に浸透している。海岸付近で湧き水となっている。山のほうはわりと水があるが、平野にでたあたりで水量が減り、河口近くで水量がまた増加する。石垣島はそのような特徴が顕著だ。
アンパルには約2キロの砂州がある。海からの砂と名蔵川から流れてきた土砂がぶつかってできたといわれている。いまのアンパルは、あちこちで水が湧き出ている。
アンパルは、汽水の湿地のほかに淡水と中間的な湿地がある。奥のほうはマングローブ林が発達している。アンパルは水位の高低差が非常に大きい。マングローブ林を構成する樹木はオヒルギやヤエヤマヒルギなどである。ヤエヤマヒルギは根元が非常に複雑になっている。
アンパルには、多種多様な生き物が生息している。エビ類ではフトミゾエビやイッテンコテナガエビなど。日本でいちばん小さいハゼのマングローブゴマハゼ(全長1.5cm)もいる。ミツボシゴマハゼもいる。いちばん大きいホシマダラハゼ(全長35cm)もいる。最近、これよりひとまわり大きいオウギハゼも確認された。シレナシジミ、タイワンシジミ、アミメノコギリガザミもいる。
アンパルにはどこから水がくるか。ひとつは於(お)茂(も)登(と)岳(だけ)のほうからきている。もうひとつはバンナ岳。そして天文台のある前(まえ)勢(せ)岳(たけ)だ。水は主にこの3方向からきている。
アンパルに注ぐ名蔵川は、名蔵ダムができたため、自然の川(白水川)とダムのある川(ブネラ川)に分かれている。
ダムができると生態系に大きな影響が生じる。沖縄の河川は海と川を行き来できる環境が重要だ。しかし、ダムができるとそれができなくなる。
アンパル水系をめぐる問題では、大きいものとしてゴルフ場計画がある。ゴルフ場は農薬を使うので、下流の稚魚に影響がでる。名蔵湾は天然モズクの生息場所になっている。これにも影響がでる。ゴルフ場とのセットとして大型ホテルを建設する計画もある。計画地の下流は絶滅危惧種の生息地になっている。とくにタウナギは農薬にめっぽう弱いので、影響を受けやすい。
課題としては水の問題がある。川の水を途中でさらに取ろうとしている。そうすると、途中で水が涸れる可能性がある。魚にたいする影響も大きい。だから湿地を回復しないといけない。
アンパルの湿地だけでなく、山から海までをセットとして考えないと保全はできない。
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