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■石垣島シンポジウムの報告(要旨)

湿地と水鳥

日本湿地ネットワーク アドバイザー 田久保晴孝さん

写真9-1

わたしは50年ぐらいずっと干潟にかかわっている。干潟はものすごい場所である。しかし、それを認識している人は少ない。平気で干潟をつぶしたり悪化させたりする。あと100年ぐらいたったら、なぜあんなことをしたのだろうとみんな思うのではないか。

ラムサール条約は、水深が6mより浅い海域を沿岸域としている。ラムサール条約は、沿岸域を残すことが大事だとし、それを世界に発している。しかし、日本ではそれがほとんど無視されている。

湿地にはいろいろな生き物がいる。そのなかで、人間からみて目立つのが鳥である。とくに水鳥だ。そのなかで減っている鳥がある。

シギ・チドリ類は56種類ぐらいいるが、ほとんど減っている。増えているのはミヤコドリぐらいだ。シギ・チドリ類は湿地に関係している。オーストラリアなどから日本を中継地にして中国や韓国に渡る。それからシベリアやアラスカの繁殖地に行く。そのルートを行ったり来たりしている。

2007年の調査によると、オオソリハシシギはニュージーランドから1万キロ先の中継地(黄海)へ7日間無着陸で渡った。1万キロも飛び続けるのでガリガリになる。ガリガリをなおさないと、そのまま繁殖地に行っても繁殖する元気がない。そのため、中継地で1か月間栄養をつけて飛んでいく。そういうのがほとんどのシギ・チドリだ。日本で繁殖するのもいるが。

アメリカでの調査結果によれば、東南アジアに渡ってくるシギ・チドリはものすごく減っている。とくにハマシギが減っている。ところが、アメリカから南北に渡る鳥はあまり減っていない。これは、東アジアの開発がものすごいことを示している。

開発の先頭をきったのは日本だ。それを中国や韓国がまねをした。いまも東南アジアがまねしている。しかも、日本のお金をつかいながら湿地帯を壊している。これに文句をいわないと、もっとひどいことになる。

シロチドリは日本で繁殖していた。たとえば東京湾の谷津干潟だ。1980年ごろはシロチドリが3000羽いた。ところがいまはゼロになってしまった。それで、シロチドリは絶滅危惧種になった。かつては普通にみられたシロチドリが絶滅危惧種になってしまった。

カモ類も減っている。ウミウなど海岸にいるウも減っている。サギは、圃場整備がいちばん影響を与えていると思う。サギの仲間はミゾゴイも含めてみんな減っている。

水鳥が減少した原因は、干潟や後背湿地(田んぼなど)が減ったことだ。とくに東京周辺の湾岸部では田んぼがなくなってしまった。

それから圃場整備だ。以前は小さな水路があって、メダカがいたり、ドジョウがいたり、ウナギがいたりした。それをすべて断ち切ってしまった。

ダム建設、河川改修、護岸整備なども大きい。水と陸の接点は生き物がいちばんいるところだが、ここをコンクリートにしてしまった。

他方で、人を恐れない鳥は増えている。

対策としては、ラムサール条約を理解していない人がたくさんいるので、その学習や普及に力をいれたい。

(JAWAN通信 No.127 2019年5月30日発行から転載)

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