■石垣島シンポジウムの講演を聴いて
豊かな水辺環境を復元した行徳湿地
─アンパル再生計画に期待する─
日本湿地ネットワーク
中山敏則
アンパル再生計画の講演を聴き、わたしは行徳湿地(行徳鳥獣保護区)を思い浮かべた。
行徳湿地は千葉県市川市の臨海部にある。かつては三番瀬の一部であり、日本有数の水鳥の飛来地だった。だが、まわりを埋め立てられてしまった。
「行徳野鳥観察舎友の会」は水鳥があふれる風景の再現をめざし、湿地の復元にとりくんだ。
湿地復元で大きな威力を発揮したのが電動水車である。かつての豊かな湿地環境をとりもどすため、2カ所に淡水池を設け、水路から家庭雑排水を導入した。その浄化策として電動水車を用いた。宇井純さん(当時は沖縄大学教授)の指導によるものだ。この水車が行徳湿地の水辺環境復元で効果を発揮した。おかげで、さまざまな底生生物が生息し、たくさんの水鳥が飛来する立派な内陸性湿地ができあがった。
千葉県企業土地管理局(企業庁の後継組織)は2017年3月、『千葉県企業庁事業の軌跡』を発行した。その本編は、行徳湿地の復元作業についてこう記している。
「市街地のなかに取り残された湿地の環境は、水門を通じた海水の交換が不十分などの理由で、内陸性湿地に飛来する野鳥の数が年々減少するなど、常に危険な状況にさらされた。このため県は、1993年度に千葉県行徳内陸性湿地再整備検討協議会を設置し、湿地の再整備についての基本方針・基本計画を策定した。(中略)これに基づき、1995年度には淡水池を2か所に設置、1996年度には浄化池を設置するなど再整備が実施された。また、市川市が観察路や観察施設の整備を進めたほか、かつての行徳地域の原風景である湿地環境の復元作業も進められた」
アンパル再生計画案には、オキシデーションディッチ(酸化溝)や遊水池の設置と水車の活用が盛りこまれている。その実現を期待したい。
(JAWAN通信 No.127 2019年5月30日発行から転載)
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