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諫早湾開門訴訟

最高裁が国勝訴の二審判決を破棄差し戻し

─農業と漁業の和解が課題─


長崎県の国営諫早湾干拓事業をめぐる訴訟で最高裁は2019年9月13日、潮受け堤防の開門命令を無効とした国勝訴の二審判決を破棄し、福岡高裁に審理を差し戻した。だが、「開門」と「開門禁止」の相反する司法判断が並び立つ「ねじれ状態」はつづいている。開門を求める漁業者側は「農漁共存の和解をめざす」としている。

◆「かろうじて司法の信頼が保たれた」

今回の訴訟は、国に5年間の常時開門を命じた2010年の確定判決にたいし、国が漁業者に開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟である。国は一審佐賀地裁で敗訴した。しかし2018年の二審福岡高裁は、「漁業権はすでに消滅し、漁業者の開門を求める権利はなくなった」と判断し、確定判決の効力を事実上無効とする国の逆転勝訴とした。そのため漁業者側が上告していた。

この漁業権消滅論は、10年の免許期間がすぎれば漁業権は消滅するというものである。

9月13日の最高裁判決は、漁業権は一度消滅しても免許が再び与えられる可能性があり、開門を求める権利も認められると理解すべき、と指摘。漁業権が消滅するという理由だけで開門確定判決の無力化は認められないとして二審判決を破棄し、高裁に差し戻して審理をつくすことを求めた。

判決を受け、最高裁の正門前に集まった有明海の漁業者と支援者らは「最高裁の良識が示された」「うれしい」と喜びあった。

「よみがえれ!有明訴訟」弁護団の馬奈木昭雄団長は「かろうじて司法の信頼が保たれた」とし、こうのべた。

「最高裁は、漁業者に開門請求権はあると明言した。私たちが示した論点を一方的に切り捨てた福岡高裁の審理もきびしく批判した。高裁での差し戻し審をがんばりぬきたい」

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諫早湾開門訴訟の最高裁判決を受け、「破棄差し戻し」「農漁共存の和解を」の垂れ幕を掲げる漁業者と弁護団=2019年9月13日、最高裁正門前

◆和解実現に向けて

最高裁は今年6月27日、別の訴訟で開門を認めない判決を確定させた。今回の判決では、開門命令を無効とした国勝訴の二審判決を破棄し差し戻した。しかし、「いずれ、6月の別の最高裁決定と同様、『開門禁止』で決着させる可能性を暗に示した」(『東京新聞』9月14日)との見方もある。開門による有明海再生をめざす漁業者などにとってはきびしい状況がつづいている。

漁業者側は「潮受け堤防を開門しなければ問題は解決しない」とし、開門を前提とした農漁共存の和解をめざす、としている。

和解を実現するためには、法廷外運動を旺盛にくりひろげ、世論を味方につけることが不可欠だ。9月13日の最高裁判決報告集会で、「高尾山の自然をまもる市民の会」の事務局長をつとめた橋本良仁さんはこう発言した。

「法廷の中だけのたたかいでは勝てない。いちばん重要なことは、国民世論を味方につけて裁判所や国にプレッシャーをかけることだ。そういうたたかいを短期間にできるかどうかだ。数十万規模の署名を集めましょう。そうしなければ世論は広がらない。このチャンスを逃すことは絶対にまずいと思う。至急検討し、私たちに提起してほしい」

「高尾山の自然をまもる市民の会」は、首都圏中央連絡自動車道建設の高尾山トンネル工事に反対する署名を56万集めた。そのうち16万は地元の八王子で集めた。

西日本各地からの辺野古埋め立て用土砂搬出に反対する運動は、請願署名を昨年10

月に開始し、わずか10か月で61万人分を集めた。今年6月、国会に提出した。

諫早湾開門署名も50万以上を目標にしてほしい。多くの国民が開門を支持していることを可視化するためにはそれぐらいは必要だ。

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判決を前に最高裁に入廷する「よみがえれ!有明訴訟」の漁業者と弁護団
(JAWAN通信 No.129 2019年11月30日発行から転載)

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