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第二東京湾岸道路をまたもや阻止

─千葉県湾岸地区道路検討会が三番瀬回避のルートを決定─


第二東京湾岸道路の建設をめざした国交省の千葉県湾岸地区道路検討会は5月26日、新たな自動車専用道路(高速道路)建設の基本方針をまとめた。東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬の三番瀬は通らないことになった。三番瀬を避けたのは三番瀬保護団体の運動と世論の力による。


第二東京湾岸道路の当初予定ルート

千葉県湾岸地区道路検討会がまとめた新たな自動車専用道路のイメージ図

◆第二湾岸道路を27年阻止

第二東京湾岸道路は、東京都大田区と市原市を結ぶ構想だ。三番瀬を通ることになっている。三番瀬保護団体は第二湾岸道路の建設を阻止するため、さまざまな運動をつづけてきた。第二湾岸道路の建設を27年も食い止めている。

三番瀬を通る第二湾岸道路が最初に具体化したのは1993年3月である。三番瀬を埋め立て、ど真ん中に第二湾岸道路を通すという計画を千葉県が発表した。三番瀬保護団体は、埋め立て計画の白紙撤回を求める署名を30万集めるなど多彩な運動をくりひろげた。県民世論の支持を得ることに全力をあげた。これが功を奏し、2001年春の知事選で朝日、毎日、読売の3紙がおこなった県民世論調査では、いずれも「埋め立て反対」が過半数を占めた。これをみた堂本暁子候補は、選挙戦の途中で三番瀬埋め立て計画の白紙撤回を唯一の公約に掲げる。堂本氏が当選した。

堂本知事は同年9月、埋め立て計画を白紙撤回した。だが国交省と県は第二湾岸道路の建設をあきらめない。堂本知事は、「埋め立て計画は白紙撤回するが、第二湾岸道路は建設する」の新方針を発表した。

県はその後、三番瀬の浦安寄りに位置する猫実川河口域で人工干潟造成計画をうちあげた。この海域に第二湾岸道路を通すことが目的だ。三番瀬保護団体の運動によって、この計画も2016年10月に中止になる。

それでも国交省と県はあきらめない。昨年(2019年)1月、石井啓一国交大臣が「第二湾岸道路の建設に向けて検討会を立ちあげる」と発表した。国交省は同年3月、千葉県湾岸地区道路検討会を発足させた。

◆県湾岸地区道路検討会が基本方針を決定

今年5月26日、同検討会は第3回幹事会と第2回検討会を開き、新たな自動車専用道路建設計画の基本方針をまとめた。この道路は三番瀬を通らないことになった。基本方針はこう記している。

①外環道高谷JCT(ジャンクション)周辺から蘇我IC(インターチェンジ)周辺ならびに市原IC周辺までの湾岸部においてルートの検討を進める。

②ルートや構造を検討するさい、東京湾奥部に残された貴重な干潟となる三番瀬については千葉県三番瀬再生計画との整合性を図る。また、地域の生活環境に配慮した計画とする。県の確保済み用地(第二湾岸道路用地)を有効に活用する。

国交省は、千葉と東京を結ぶ第二湾岸道路の建設を基本方針に盛りこもうとした。千葉と東京を結ぶためには三番瀬を通すことが必要となる。ところが、船橋市、市川市、浦安市の三番瀬沿岸3市は、第二湾岸道路を三番瀬に通すことには反対もしくは慎重な立場をとっている。検討会の幹事会には3市も加わっている。

かつては、3市も三番瀬埋め立てや第二湾岸道路建設を積極的に推進する姿勢だった。「三番瀬を守ろう」の運動と世論の高まりによって3市の姿勢は様変わりする。とくに船橋市は、三番瀬を通る第二湾岸道路計画に強く反対するようになった。船橋市の人口は64万人だ。市長はこう公言している。「三番瀬は次の時代にきちんと伝えていかなければならない大事な自然なので、それを最優先にする」。県の三番瀬再生計画も、埋め立てを中止させた運動によって実現した。

ようするに、検討会を立ちあげたものの、国交省の思惑どおりにはいかなかったということだ。千葉と東京を結ぶ第二湾岸道路建設の道すじはつけられなかったのである。

それでもなお、国交省と県はあきらめない。県は、高谷JCTより西側の第二東京湾岸道路の建設についても引き続き国に要望する、としている。

◆三番瀬保護団体が県交渉

三番瀬保護7団体は6月30日、検討会がまとめた基本方針について県道路計画課と交渉した。参加者からこんな意見がだされた。

「国道357号などの一般道路が渋滞しているから新しい道路を建設するというが、高速道路の東関東自動車道は空いている。通行料金が高いからだ。新しい有料高速道路をつくっても一般道路の渋滞解消にはつながらない」

「三番瀬の近くで高架道路を建設したり、船橋航路に巨大な橋を架けたりすると、三番瀬と谷津干潟の間を行き来する鳥の飛来に影響がでる」

写真1-1
千葉県湾岸地区道路検討会がまとめた基本方針について県道路計画課と交渉する三番瀬保護団体のメンバー=6月30日、千葉県庁舎で

◆今後の対応などを船橋市と話しあい

7団体は8月5日、今後の対応などについて船橋市と懇談した(本誌1ページの写真)。市は都市計画部長、道路部長、環境政策課長、都市計画課長が出席した。市は「三番瀬を再優先にする」をあらためて強調した。

新しい自動車専用道路の具体的なルートはまだ決まっていない。千葉市と習志野市の埋め立て地には第二湾岸道路用地が確保されている。これと外環道高谷JCTを結ぶと、三番瀬に隣接する船橋市の三番瀬海浜公園や公園の近くを通ることになる。また、大型船が通行する船橋航路に巨大橋が架かる。そうなると、三番瀬と谷津干潟(ラムサール条約湿地)を行き来する野鳥の飛来に影響がでる。

市はこうのべた。

「具体的なルートを検討する場には船橋市も加わる。今後は計画段階評価に移行し、ルートや構造の複数案を比較して評価を実施することになる。評価の項目には三番瀬再生計画との整合性も含まれる」

三番瀬保護団体は、三番瀬を守ったり、野鳥への悪影響を食い止めたりするため、今後もねばりづよく運動を進めることにしている。

(三番瀬を守る連絡会 中山敏則)

写真1-2
今後の問題などについて船橋市の都市計画部長、道路部長、環境政策課長、都市計画課長(右手前の4人)と話しあう三番瀬保護団体のメンバー=8月5日、船橋市役所で

第二東京湾岸道路をめぐる経過

1993年3月発表の三番瀬埋め立て計画(740ha)

1999年6月発表の埋め立て縮小案(101ha、2001年9月白紙撤回)

埋め立て計画白紙撤回後の人工干潟造成計画(2016年10月中止)
(JAWAN通信 No.132 2020年8月30日発行から転載)

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