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2021年1月ガンカモ調査

日本野鳥の会徳島県支部 三井義雅

第52回全国一斉ガンカモ調査の集計が終了しましたので報告します。今回の総計は2万2909羽。昨年は2万3672羽でしたので763羽減、昨年比96.8%、わずかな減少といったところでしょうか。また、3年連続でマガモ>ヒドリガモとなりました。本調査で初のようです。

希少種としましては、ヒシクイ5羽、ビロードキンクロ1羽、ミコアイサ1羽、シノリガモ1羽、アメリカヒドリ1羽、カワアイサ19羽、トモエガモ96羽がありました。

写真2-1
2021年1月4日 ミコアイサ 鳴門市新池川
写真2-2
2020年11月1日 ヒシクイ 鳴門市大谷川

今回特筆すべきはヒシクイで、5羽が確認されました。10月中旬吉野川河口に飛来した3羽に、12月中旬おそらく松茂町内にいた1羽が仲間に入り、正月明けからか?もう1羽飛来し5羽になっていました。この間、小松島市内で継続して観察されていたTYさんに教えてもらえたらと思います。2月上旬現在も越冬中です。最初はトモエガモがトップニュースと思っていましたが、2007年1月調査で111羽がありましたので今回の96羽は次点にしました。シノリガモが河口から30㎞も内陸部で記録されたことも記憶に留めておきたいです。繁殖期は渓流で、非繁殖期(越冬期)は海岸岩礁で生息らしいです。ハクチョウ類では、コブハクチョウが吉野川中流域で1羽確認されました。今回から野外で繁殖可能性のある移入種も必ず報告することになっての記録とも言えます。早い時期には複数確認されていたように聞いています。

同時に実施しましたカワウ調査は2432羽でした。2010年以降最大だった2018年の2809羽の約87%となっていて、昨年の1206羽からは倍増しています。今回の最大は月見ヶ丘で988羽です。次いで吉野川河口の500羽、小鳴門橋下の300羽です。この3地区で全体の73.5%を占めています。吉野川から北側の海岸地域が多いようです。今回3番目に多かった小鳴門橋中央主塔下の小島(鍋島と言っていましたが?)は、昨年までは少数でしたが、今回は島の北東側全体が白くなっているほどです。全周を見ることができれば数はもっと多いと思われます。

表2-1
【表1】2021年(今回)のガンカモ類確認数の2020年との比較
表2-1
【表2】2021年(今回)と過去5年及び10年平均のガンカモ類確認数との比較

【表1】から昨年比増加率最大はオシドリの253%です。

【表2】から過去5年間比で184%となっていますが過去10年間比では119%にとどまっています。過去記録を調べますと2015年~2020年の平均は411羽と少なく、2009年~2014年では896羽と多かったです。6年周期か? 昨年比増加率次点はヨシガモの224%、過去5年間比172%、10年間比154%となっており増加傾向にあるのかもしれません。今回最大数のマガモは昨年比114%。また、過去5年間比10年間比とも増加しており最少の2016年(4112羽)から復活傾向にあるのかもしれません。カルガモは昨年比99%ですが、長期的には増加しており、好調を保っていると考えてよいのではと思います。ヒドリガモですが、集計途中ではカルガモ>ヒドリガモの可能性?も思いましたが、名田橋・第十堰間の吉野川で1056羽が確認され、カルガモを引き離しましたが少なめで推移しています。昨年最大の減少率となったオナガガモは昨年比216%と倍増していますが、過去5年間比で72%、10年間比では62%になっていて増加とは考えにくいです。その他、ウミアイサ、オシドリ、ホシハジロ、キンクロハジロ、スズガモも過去5年間比、10年間比とも減少しており減少傾向が続いているようです。今回、最大の減少率となったのはコガモでした。昨年比43%、過去5年間比53%、10年間比59%と大きく減少しています。今回の1359羽は2000年以降最少となっており、今後の推移を見ていく必要があるように思われます。

今回の実施要領改正で、「(旧)可能な限り多くの渡来地を調査地として選定し…」→「(新)ガンカモ類の生息状況を概ね把握できるよう、主要な渡来地を調査地として選定」になったことなどにより、調査地点は77→75(内1復帰)で昨年度比較可能な74地点に対し増加しているのは33地点で小松島湾+791、吉野川河口+510、今切川+497、長安口ダム+457など、減少は38地点で吉野川JR鉄橋~第十堰-1304、吉野川大橋~JR鉄橋-877、つきだめ池-383の順で、増減なし3地点でした。吉野川河口から連続する3地点で河口から順に、増加、激減、激減となっているようです。この3地点の収支は-1671で激減していると思います。つきだめ池は減少数では3位ですが、昨年385羽→今回2羽と99.5%減少しています。ハンドル名“ごじんさん”のカワセミメールから10月下旬はある程度の数がいたようですが、11月下旬からほとんど見かけなくなりました。カイツブリ4~5羽はいつもいることから急激な水質悪化はないと思いますが。

◎ヒシクイ(Anser fabalis)

【和名ヒシクイ(ヒシの実を食べることかららしい)、学名:Anser(マガン属) fabalis(豆の)=「豆のマガン属の鳥」、英名Bean(豆) goose(ガン、ガチョウ)=「豆のガン、ガチョウ」と今回勉強した】

ヒシクイ5羽はガンカモ調査では過去最大です。これまでは、1986年、2004年に各1羽記録されているのみです。過去の記録に詳しくないため正確ではないですが、ここ5年間ほどで徳島県での確認数が増加しているように感じます。ガンカモ調査と関係なく古い記録がありましたら公開してもらえたらと思います。記憶ですが、出島野鳥園に数年前に2羽(前田さん学習舎担当?)、2016年吉野川河口3羽、2017年2月上旬から3月1日まで確認できた柿原堰周辺で2羽(マガン1羽と一緒に)、そして今回の5羽。過去の詳しい記録は知りませんのでここ数年間で飛来数が増えているのは勘違いかもしれません。

1998年1月実施以降の全国記録を調べますと最大2014年2万471羽、最少2001年4719羽と4.3倍以上の大きな差がありましたので、増減の経年変化を見える化してみました。

図2-1
全国で1998年から2020年に見られたヒシクイの確認数

1997年以前は調査地点数もかなり違うことなどにより数が少ないため1998年~2020年を調べました。1998年~2009年の12年間平均は1万254羽、2010年~2020年の11年間平均は1万3460羽と約31%増えています。しかし、2011年~2015年の5年間平均は1万5739羽、2016年~2020年平均は9990羽と約36%減っています。年度の切取り方により違いが大きいようです。全国調査で数多く確認された年に本県に飛来とは無関係のようです。

◎トモエガモ(Anas formosa)

【和名:トモエガモ、学名Anas (マガモ属)formosa (美しい)=美しいマガモの種類か~、英名:Baikal (バイカル湖) teal (コガモ)=バイカル湖のコガモ】

トモエガモ96羽。これまでで2番目の多さです。最大は2007年の111羽(特に倉谷池86羽)、多くは1桁台です。調査前には出島野鳥園や四国三郎橋で計200羽近くも確認されていました。

カモの図鑑の中に何種類かの組み合わせによる交雑種の写真がありました。なぜかトモエガモのような眼から下に伸びるような隈取りがある組み合わせが多いようです。だいぶ前でしたが、たしか米子水鳥公園で「トモエガモ」を見つけたと思ったら、カモに詳しい方から、あれは交雑種と教えてもらった記憶があります。体型も違うらしく、長い(大きい)とのことで識別しにくい個体もあるみたいです。今度見たら分かるかな?

今年も全国一斉ガンカモ調査に参加下さいました方々に感謝いたします。

【参加者】

石川茂夫、岩佐隆範、臼井恒夫、鹿草 誠、鎌倉和敏、神野 忠、笠井好博、北岡祥治、後藤田利明、庄野 孝、四宮康平、関 憲二、高井正明、高橋和則、高曽根博文、谷本洋子、津田真由美、東條秀徳、浜井芳明、濱田 宏、橋本修一、前川雅寿、前田勝重、三ツ井政夫、峯 勝久、三宅 武、吉田和人、三井義雅 以上28名

KMさんから教えてもらった1月4日まで確認できたミコアイサ♂エクリプスと思われる個体。もう少しいてくれたら、真白なきれいな♂成鳥が見られたかも。また、KMさんによると少し離れた場所にもう1羽いて、一時的には別々の場所で3羽いたとのことでした。

10月31日から当日まで。その後、長原? 12月頃吉野川の3羽に合流したのかも。

〈注〉本稿は日本野鳥の会徳島県支部報『野鳥徳島』No.510(2021年3月)から転載させていただきました。


JAWAN通信 No.135 2021年5月30日発行から転載)