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『図説 中池見湿地』を発刊

─NPO法人ウエットランド中池見─


写真5-1

NPO法人ウエットランド中池見は10月、『図説 中池見湿地』を発刊しました。カラーの図と写真を多用し、中池見湿地の構造や歴史などをわかりやすく解説しています。すぐれた学習資料です。

本書は、これまでの活動で得られたものをとりまとめたものです。編集は「ナチュラリスト敦賀 緑と水の会」資料室です。

中池見湿地は福井県敦賀市の市街地の近くにあります。三方を山に囲まれた約25haの小さな湿地です。中池見湿地は「袋状埋積谷」とよばれています。地形が袋状になっているからです。40mを超える厚さの泥炭層が10万年もの歴史で形成されてきました。このような泥炭層は世界的にもほとんど例がありません。過去から現在までの自然環境の変化や気候変動を知ることができるので、学術上もたいへん重要です。本書を読めば、そうした貴重さがよくわかります。中池見湿地の水環境や生物相もわかります。

中池見湿地は、「緑と水の会」や「ウエットランド中池見」のねばり強い運動によって保存されました。1990年、敦賀市の工業団地計画が頓挫します。その2年後、大阪ガスの敦賀LNG備蓄基地建設計画が浮上します。運動によってこの計画も中止になりました。そして2005年、大阪ガスが土地を敦賀市に寄付しました。これによって中池見湿地は守られました。

両団体の運動が実をむすび、2012年、中池見湿地はラムサール条約に登録されました。未来へ継承されることになったのです。

ところが、登録と同時に北陸新幹線のルートが発表されました。新幹線が条約登録区

域内を通ることになったのです。運動によってルートが変更され、「うしろ谷」は通過しないようになりました。「うしろ谷」は湿地の一部です。それでも条約登録区域内の一部を貫通します。本書を読むと、そうした運動の歴史や現状もわかります。

A4判68ページ。連絡先は0770(23)5003笹木進さんです。

(編集部)


JAWAN通信 No.137 2021年11月30日発行から転載)