第二東京湾岸道路の建設はやめて!
~東京ベイまちづくり戦略で東京都と交渉~
第二東京湾岸道路を盛りこんだ「東京ベイeSGまちづくり戦略(案)」を東京都の都市整備局が発表した。そこで三番瀬保全団体は3月1日、担当の開発企画課長と交渉した。2009年4月以降、92回目の行政交渉である。
交渉したのは、日本湿地ネットワーク(JAWAN)に加盟する5団体(三番瀬を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉の干潟を守る会、千葉県野鳥の会、千葉県自然保護連合)など三番瀬保全7団体だ。7団体は、三番瀬を通る第二東京湾岸道路の建設を29年間も食い止めている。だが国交省と千葉県はあきらめない。
第二湾岸道路は東京都大田区と京葉臨海コンビナート(市原市など)を結ぶ国家プロジェクト(国策)だ。このコンビナートは世界最大級のエネルギー・素材供給基地である。財界もこの道路の建設促進を要請している。
昨年4月に就任した熊谷俊人千葉県知事は第二湾岸道路の建設に熱心である。7月、「新たな湾岸道路整備促進大会」を開いた。国交省と千葉県は、新たな湾岸道路を第二湾岸道路の第一段階と位置づけている。
こうしたなかで、東京都が「東京ベイeSGまちづくり戦略」(案)を発表した。これは臨海部の巨大開発構想である。「eSG(イー・エス・ジー)」の「e」はエコロジー、「S」は渋沢栄一、「G」は後藤新平の頭文字だ。小池都知事が得意とするネーミングである。
都はこのなかで第二湾岸道路の建設を初めて打ちだした。担当は都市整備局都市づくり政策部の開発企画課である。
◆「国交省からは話がない」
7団体は、「千葉県側では第二湾岸道路の具体的なルートが決まらない。こうした経過をどのように認識しているか」と質した。開発企画課長は答えた。
「具体的なルートが決まっていないことは認識している。まちづくり戦略(案)に第二湾岸道路を図示したのは、国(国交省)のほうで第二湾岸道路の構想があるからだ。将来整備されるインフラの可能性として第二湾岸道路を図示した。第二湾岸道路について、国交省からは話がない。国交省と都が前に向かってなにか協議しているかというと、協議はまったくしていない」
千葉県湾岸地区道路検討会がまとめた「新たな湾岸道路」(自動車専用道路)建設計画の基本方針についてはこうだ。
「われわれは、その基本方針についても勉強している。国は慎重に対応していて、新たな湾岸道路も基本方針をまとめた段階で止まっていると認識している」
◆「決まったことに対応する」
7団体はこう話した。「三番瀬に面する浦安、市川、船橋、習志野4市は、第二湾岸道路を三番瀬に通すことについて慎重もしくは反対の姿勢を示している。とくに船橋市は強く反対している」。
この点について、課長はこう述べた。
「われわれとしては、決まったことに対応することになる」
◆「三番瀬はどうでもいい、とは考えていない」
2018年10月、葛西海浜公園がラムサール条約に登録された。小池都知事の決断によるものだった。野鳥の楽園となっていることなどが登録の理由だ。三番瀬も野鳥の楽園となっていて、葛西海浜公園と三番瀬を行き来している野鳥も多い。ところが東京都は、三番瀬を通る第二湾岸道路の建設を打ちだした。エコロジーをキャッチフレーズにしてである。「一体どうなっているのか」と質した。
課長は答えた。
「ラムサール条約に登録された葛西海浜公園は大事に保全している。三番瀬についての心配も理解できる。われわれは、ラムサール条約に登録された葛西海浜公園はしっかり保全するが三番瀬はどうでもいい、ということは微塵(みじん)も考えていない。小池知事も同じ考えだと思う」
◆「自然を守る活動は大事」
東京湾奥部に残された貴重な干潟・浅瀬を守るため、三番瀬保全団体はさまざまな運動をつづけている。運動の写真を何枚も見せてそれを話した。課長はこう述べた。
「自然を守る活動は大事だと思
う。そのへんについてはしっかり話しあいながらやっていかなけ
ればならないと考えている」
今後も話しあうことを確認し、交渉を終えた。
都は3月30日、「東京ベイeSGまちづくり戦略2022」を発表した。「案」と同じように第二湾岸道路も描かれている。
*空飛ぶクルマを飛行させて車道をなくすと描きながら 第二湾岸道路を建設するという矛盾
東京ベイeSGまちづくり戦略に大きく載せてある絵を見ると、車道をなくして人が歩けるようにする、となっている。空飛ぶクルマを飛行させ、ドローンで荷物を運ぶ、としている。現在は車道になっている場所も、絵では車道がなくなりホテルが建っている。このように、車が走る道路ではなくて人が歩く道をつくるというのがまちづくり戦略の売りである。ところが、その一方で第二東京湾岸道路を描いている。
車道をなくして空飛ぶクルマを飛行させると描いているのに、なぜ第二湾岸道路をつくるのか──。それを共産党の都議会議員が議会で追及すると、都はまったく答えられないそうである。
この戦略の作成には大手デベロッパーの関係者が深く加わっている。都は、東京五輪の選手村用地(都有地、13.39ha)を大手デベロッパーにものすごく安い価格で売却した。公示価格の10分の1以下の価格(129億6000万円)である。この問題をめぐって訴訟も起きている。巨大臨海開発の裏にはそのような問題も横たわっている。