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『図説 ラムサール条約登録 中池見湿地』の紹介

NPО法人ウエットランド中池見 笹木 智恵子

中池見湿地(福井県敦賀市)がラムサール条約に登録されて今年7月3日で10年となりました。

敦賀市の工業団地構想の候補地と報道された1990年当時、私たちはそこが「中池見」という所だと知りませんでした。現地の状況を知り、資料を発掘・収集することから活動が始まりました。振り返ると、中池見との係わりは30年を超えたことになります。

中池見湿地の希少性、重要性については学術調査報告など多くの文献で報告されてきましたが、なかなか理解が進まないということから、私たちは機会あるごとに図解、図示を試みて展示、啓発活動も行ってきました。ラムサール条約登録年に開店した市内の大型商業店舗が地域貢献にと中池見湿地の常設展示コーナーを設置。無償提供を受けてこれら制作した展示物を通年掲示、好評を得ています。

今回発行の冊子は、登録10年目ということで昨年から紹介展示を行ってきた中池見湿地が該当する国際登録基準、3基準についての図説資料を取りまとめたものです。

内容は、最初にラムサール条約についての説明と中池見湿地の位置と概要を。続いて該当登録基準3項目について図で説明したものとなっています。

基準1(特定の生物地理区内で、代表的、希少または固有の湿地タイプを含む湿地)=「袋状埋積谷」と「泥炭層」について、特に中池見湿地の真髄ともいえる世界屈指の堆積年月、厚さを誇る泥炭層。見えないところにあるものだけにどう「見える化」するか工夫しました。一番深い位置のボーリングコア柱状図を加工して、今後の研究材料としても着目次第でいかに貴重な材料を蓄積しているか、また11万年分の地質年表として歴史も感じられるものにしました。

図4-3
埋積谷のおいたち

基準2(絶滅の恐れのある種や群集を支えている湿地)=希少な陸鳥「ノジコ」について、中池見で長年調査を続けている方に解説をお願いし、渡りの重要な中継地であることと、あまり知られていないノジコについて説明と図で紹介しています。

基準3(特定の生物地理区における生物の多様性の維持に重要な動植物を支えている湿地)=豊かな動植物相について、どう絵に描くか悩みましたが、複雑な地形と多様な生息環境が多くの生き物たちの生活を支え、繋がりあって生きている様子を図示。どれだけの生き物たちの生息が確認されているかを各種調査データで示しました。

最後に、海と湿地の自然と歴史を巡る散策路としての中部北陸自然歩道と周辺ガイド地図を付けました。

図4-1
図4-2
JAWAN通信 No.140 2022年8月10日発行から転載)