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幹線道路網構想の見直しを要求

~新たな湾岸道路で三番瀬7団体が県交渉~

三番瀬7団体は8月18日、千葉県の道路計画課と交渉し、新たな湾岸道路を含む幹線道路ネットワーク構想の見直しを要求した。

(編集部)

幹線道路ネットワーク構想や新たな湾岸道路計画について千葉県の道路計画課(手前)と交渉する三番瀬7団体のメンバー=2022年8月18日、千葉県庁舎

三番瀬は東京湾の奥部に残った貴重な干潟・浅瀬である。三番瀬7団体は、三番瀬を通る第二東京湾岸道路の建設を29年間も食い止めている。この道路は東京都大田区と千葉県市原市を結ぶもので、国家事業(国策)である。7団体とは、日本湿地ネットワーク(JAWAN)に加盟する5団体(三番瀬を守る会、千葉の干潟を守る会、三番瀬を守る署名ネットワーク、千葉県野鳥の会、県自然保護連合)などだ。

7団体の運動の基本は「あらゆる戦術を駆使する」「世論を味方につける」である。国策の第二湾岸道路を29年間も阻止しているのはその成果である。

だが、国土交通省と千葉県は第二湾岸道路の建設をあきらめない。国交省が設置した千葉県湾岸地区道路検討会は「新たな湾岸道路」の基本方針をまとめた。2020年5月である。国交省と県は、新たな湾岸道路を第二湾岸道路の第一段階として位置づけている。

7団体は8月18日、新たな湾岸道路などについて千葉県の道路計画課と交渉した。参加者は19人。7団体がおこなった行政交渉は、2009年4月以降、13年間で95回におよぶ。

◆温暖化対策と矛盾

交渉では、県内に幹線道路をはりめぐらす道路ネットワーク構想も問題にした。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の大栄・横芝間、北千葉道路、千葉北西連絡道路などである。新たな湾岸道路も含まれる。昨年4月に就任した熊谷俊人県知事は、凍結状態になっている東京湾口道路構想(千葉県富津市-神奈川県横須賀市)の復活も国に要望するとしている。

7団体は次のように批判し、幹線道路ネットワーク構想の見直しを求めた。

「千葉県は相変わらず巨大開発を優先させている。旧態依然の発想である。県内のあちこちで高規格道路の建設をつづけるとどうなるのか。地球温暖化への影響はどうなのか。そういうことも検討すべきだ。根本的に見直してほしい」

「幹線道路をはりめぐらす計画は道路交通量を増やすことにつながる。温室効果ガスの排出削減を目的とした千葉県地球温暖化対策実行計画と矛盾する。この実行計画は公共交通機関・自転車の利用やカーシェアリングの普及啓発にとりくむとしている。車の通行量を減らすということだ。ところが道路計画課が推進しているのは道路交通量を増やすことだ。その整合性はどうなっているのか」

7団体の要求にたいし、県はこう答えた。

「湾岸地域などは交通混雑が発生している。そこの交通をなめらかにし、速度をよくすることによって排ガスの量を抑制することができる」

参加者からこんな意見がだされた。

「道路などを建設するさいの環境アセスメントでは、地球温暖化への影響は含まれていないはずだ。道路をつくる場合はCO2をこれだけ減らさなければならないとか、渋滞をこれだけ解消させなければならないということはない。だから渋滞が増えてしまう。もしくは渋滞の場所が移るだけになってしまう」

◆「案を固める前に意見を聴く」

新たな湾岸道路の問題では、「ルートや構造を決めるさいは、案を固める前に複数の案などを市民に提示して意見を聴く」との言質を得た。

新たな湾岸道路は、東京外かく環状道路(外環道)の高谷JCT(ジャンクション)周辺から蘇我IC(インターチェンジ)周辺ならびに市原IC周辺までの湾岸部においてルートの検討を進める、となっている。具体的なルートは決まっていない。高谷JCT、蘇我IC、市原ICの3つのポイントが決まっているだけだ。

新たな湾岸道路は計画段階評価の手続きで進めることになっている。計画段階評価の導入は、千葉県内では新たな湾岸道路が初めてとなる。長年にわたる三番瀬保全運動の成果である。

参加者からこんな懸念がだされた。

「具体的なルートや構造を決めるさいは市民などから意見を聴くというが、事業者が固めた案を提示するのではないか」

道路計画課は答えた。

「新たな湾岸道路のルートや構造は計画段階評価のなかで検討することになる。ルート案を固めたあとに意見を聴くということではない。計画段階評価におけるルートの決め方は、複数のルート案を提示し、それについて意見を聴くのが一般的だ。そのさい、提示したもの以外のルートを希望するという方もおられると思う。そのような意見も聴きながら検討することになる。『ルートはこれで固まっています。なにか意見がありますか』ということではない」

◆期成同盟もまな板に

期成同盟もまな板にのせた。 「東京湾環状道路並びに関連道路建設促進期成同盟」である。この期成同盟は、新たな湾岸道路や第二湾岸道路の早期具体化を国に求めている。

期成同盟の会長は副知事、事務局は県道路計画課がつとめている。県と11市、経済団体、湾岸進出企業が会員になっている。だが規約などは公開していない。

7団体は批判した。

「県や市が税金から会費(負担金)を支出している。県職員が公務として運営にかかわっている。にもかかわらず、規約や活動状況などが公開されていない。納得できない」

交渉の結果、期成同盟の資料を入手した。規約や会員名簿、役員一覧、収支決算などである。

7団体は県や国交省との交渉を今後もつづけることにしている。関係市との話しあいもつづける。


JAWAN通信 No.141 2022年11月30日発行から転載)