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リゾート開発阻止で院内集会

~石垣島のカンムリワシの里と森を守る会と
アンパルの自然を守る会~


「問題だらけのゴルフ場付き大規模リゾート開発はノー」。これを訴える院内集会が2022年12月8日、衆議院第一議員会館で開かれた。主催は「カンムリワシの里と森を守る会」と「アンパルの自然を守る会」。両団体は石垣島の自然を破壊するリゾート計画に反対している。石垣島の住民を危機に陥れる陸上自衛隊のミサイル基地建設にも反対している。

主催団体の「カンムリワシの里と森を守る会」と「アンパルの自然を守る会」のメンバー

◇     ◇

院内集会には日本湿地ネットワーク(JAWAN)の関係者も11人参加した。国会議員は8人が出席した。立憲民主党の篠原孝衆院議員(長野1区)、近藤昭一衆院議員(愛知3区)、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員(沖縄1区)、山下芳生参院議員(比例区)、沖縄の風の高良鉄美参院議員(沖縄選挙区)、伊波洋一参院議員(同)などだ。

石垣島の自然保護団体が開いた院内集会=2022年12月8日、衆議院第一議員会館

◆中国との戦争を想定し、ミサイル基地を建設中

石垣島(石垣市)はたいへんな状況になっている。中国との戦争を想定し、陸上自衛隊がミサイル基地を建設中である。敵基地先制攻撃能力の強化が目的だ。有事になれば真っ先に攻撃対象となる。

石垣島の若者たちは住民投票運動をはじめた。わずか1か月間で石垣市の有権者の3分の1以上の署名を集める。しかし、市議会は住民投票条例案を否決した。

石垣市には独自の自治基本条例がある。有権者の4分の1以上の請求で市長は所定の手続きを経て住民投票を実施しなければならないとされている。市はそれを無視した。

若者たちは裁判を起こして住民投票の実施を求めた。ところが、1審、2審、最高裁とも「訴訟にはなじまない」として門前払いである。裁判所は、石垣市の対応が市の自治基本条例に違反していることはいっさいふれない。そのいきさつは、湯本雅典監督がドキュメンタリー映画『島がミサイル基地になるのか 若きハルサーたちの唄』で描いている。

日本政府が中国との戦争を想定し、日米一体の軍事戦略を展開、強化しているなかで、憲法と地方自治の破壊が日本の西端の島で進んでいる。

◆自然を破壊するリゾート計画

石垣島では、豊かな自然をメチャクチャに壊す大規模なリゾート計画も進んでいる。

「石垣リゾート&コミュニティー計画」は、東京に本社を構える大企業のユニマットグループが計画している。対象地は、市街地の北西にそびえる前勢岳(まえせだけ)の北斜面である。その約6割に相当する127haという広大な緩斜面で、18ホールのゴルフコースと5~10階建ての中高層ホテル6棟(461室)、戸建ヴィラ58棟、プール79か所などのリゾート施設を併設する。完成すれば、石垣島で最大規模のリゾート施設になる。この開発計画に石垣市が協力している。

開発予定地は自然がたいへん豊かである。国指定特別天然記念物のカンムリワシも生息している。多種多様な環境がぎっしりつまっている。急傾斜の谷筋は照葉樹を中心とする深い樹林に覆われている。石垣島固有のイシガキパイヌキバラヨシノボリなど多くの希少な水生生物が生息するウガドゥカーラ沢の安定的な流れを支えている。さまざまな動物たちが餌場として利用している。

予定地はラムサール条約湿地「名蔵アンパル」の源流域でもある。そこにゴルフ場などがつくられれば、名蔵アンパルも大きな影響を受ける。ところが、環境省はこの開発計画を静観している。

◆カンムリワシの聖地を奪う

質疑で千葉県野鳥の会の西沢正浩さんは述べた。

「2019年3月、日本湿地ネットワーク(JAWAN)のシンポジウムが石垣島で開かれた。私も参加した。そのときに感じたのは、石垣島はものすごく豊かな自然が保たれていることだ。それに驚いた。カンムリワシの生息は、相当な生態系が保たれていることを示している。豊かな生態系が保たれていないとカンムリワシは生息できない。それを支えている石垣島の自然はすごいと思う」

西沢さんの発言を受けて、「カンムリワシの里と森を守る会」の山崎雅毅共同代表は話した。

「カンムリワシのテリトリーは約1キロといわれている。2羽が営巣で生き延びるためには1キロのテリトリーがなければダメだとされている。前勢岳はカンムリワシの聖地となっている。現在、そこで2組の営巣が確認されている」

「カンムリワシは蛇食いワシと言われている。両生類が大好きだ。そのような環境のなかで生きている鳥である。ゴルフ場建設は、そうした自然をそっくりつぶしてしまう。虫もすべて殺してしまう。ゴルフ場にとっては虫がいると困るからだ。開発後にカンムリワシが戻ってくることはない。カンムリワシが生き延びている場所でリゾート開発をするのはとんでもないことだ」

◆「時代遅れの開発は止めてほしい」

集会が終わったあと、参加者からこんな感想が寄せられた。

「石垣島がすごい状況になっていることをはじめて知った」

「石垣島の豊かな自然を大規模に壊す時代遅れのリゾート開発は食い止めてほしい」

石垣島で大規模な自然破壊計画やミサイル基地建設が進んでいることを本土の人たちはほとんど知らない。マスコミが報じないからだ。そこで国会議員の支援を求めるために院内集会を開いた。出席した国会議員からは支援したい旨のメッセージをいただいた。


JAWAN通信 No.142 2023年2月10日発行から転載)