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諫早湾開門認めず

~最高裁が不当決定 漁業者の上告を棄却~


最高裁第3小法廷は2023年3月1日付けの決定で、諫早湾の潮受け堤防排水門の開門確定判決を維持するよう求めた漁業者側の上告を棄却した。これで、開門確定判決の効力は失われたとした二審の福岡高裁判決が確定した。漁業者は怒りの声をあげた。

◆「法治国家って何なんだ」

開門を求めてきた漁業者側の弁護団は、「憲政史上初めて確定判決に従わなかった国を免罪するもので、司法本来の役割を放棄した」との声明を発表し、最高裁決定を批判した。

国に開門調査を求めてきた佐賀県の山口祥義知事も、「確定判決に従わず、和解協議も応じないやり方で判決を勝ち取ることがかなうとすれば、法治国家って何なんだとすら考えざるを得ない」と批判した。そして「有明海再生に向かってひとつになれる体制をつくってほしい」と国に求めた。

原告で佐賀県太良町の漁業者、平方宜清さんはこう述べた。

「私たちが裁判を起こしたのは、三権分立を信じ、司法は真実を追求して判決を出してくれるとの思いがあったからだ。今回の決定は信じられない。怒りが強い」

◆豊かな海を取り戻そう

諫早湾国営干拓事業の工事開始と潮受け堤防排水門の閉め切りによって、有明海は環境悪化が続いている。漁獲量は減る一方である(下のグラフ)。開門は待ったなしの状態になっている。にもかかわらず、国(農林水産省)は排水門を開門しない。

「諫早湾の干潟を守る諫早地区共同センター」は3月5日に総会を開き、最高裁の不当決定に抗議する決議文を採択した(下記)。決議文は、「今回の判決が、将来に渡る紛争解決への道を閉ざしているのは明白である。私たちはこの状況打開のために、皆さんとの対話によって有明海と諫早湾がかつての豊かな海を取り戻すことを目指して行動します」としている。


決議文

請求異議 最高裁不当決定に抗議する

2023年3月1日最高裁は、2010年10月の福岡高裁で確定した「開門判決」に異議を申し立てた国の請求を認め、漁民らの上告を棄却した。

最高裁は確定判決による強制執行を覆す1987年の判例で「著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使に値しないほど不当なものと認められる場合であること。」と厳格な基準を示している。

しかし国の請求は「シバエビなど、有明海の魚介類の漁獲高は増えている」など、漁場の実体を無視、曲解した非科学的な判断によるものである。

2022年3月の判決の中で福岡高裁は「有明海は国民的資産であり」「有明海の周辺に居住し、すべての人々のために、当事者、関係者の全体的、統一的解決のための尽力が強く期待される。」と述べている。

有明海という自然を理解し、地域住民の生活を考えるためには、現地を訪ね、人々との話しあいを重ねることが、その第一歩である。

海の環境を知り、地球の動向を考察するためには、科学的な調査が基本となり、その対策が見えてくる。補助金、助成金で解決できるほど、簡単なものでは無い。

今回の判決が、将来に渡る紛争解決への道を閉ざしているのは明白である。

私たちはこの状況打開のために、皆さんとの対話によって有明海と諫早湾がかつての豊かな海を取り戻すことを目指して行動します。

2023年3月5日

諫早湾の干潟を守る諫早地区共同センター

総会参加者一同


JAWAN通信 No.143 2023年5月10日発行から転載)