問題山積の洋上風力発電
◆利権と不正の横行
政府は洋上風力発電を再生可能エネルギーの切り札と位置づけている。入札で選ばれた事業者は、最長30年間にわたって政府からいたれりつくせりの援助を受けることができる。その原資のかなりの部分は国民負担である。
そのため、洋上風力発電は利権と不正を生む巨大ビジネスとなっている。それは秋本真利衆院議員の起訴が証明している。秋本議員は、風力発電会社に有利な国会質問をした見返りに、会社の元社
長から6000万円超の賄賂を受け取ったとして起訴された。この事件は氷山の一角とみられている。
洋上風力発電をめぐる利権と不正は以前から指摘されていた。たとえば月刊誌『選択』2022年7月号は、「洋上風力は『利権と不正』の巣窟に」と題した記事を載せた。価格競争が働かない洋上風力発電をめぐって激しい受注競争がくりひろげられているとし、こう記す。「地元に酒(接待)とカネ(地域振興)を多くバラ撒いた者が勝つことになる」。
◆カネと接待による懐柔
9月12日放送のNHKテレビ「クローズアップ現代」もこの問題を報じた。タイトルは「疑惑の国会質問 洋上風力発電“汚職”の裏で何が」だ。こんな事実を明らかにした。取材を進めると、現地でくりひろげられていた熾烈な競争の実態が見えてきた。風車が建設される海域では、長年にわたり定置網漁がおこなわれている。したがって、洋上風力の建設には地元漁業者の同意が欠かせない。NHKは漁業者を対象にした視察旅行の行程表を入手した。行き先は長崎県の五島列島である。日本の洋上風力発電の先進地だ。2泊3日の行程のうち、視察は初日だけ。2日目は福岡で観光し、九州の名物料理を味わう予定が組まれていた。旅費や食費は日本風力開発が負担したという。秋田県沖では、定置網漁がおこなわれていた海域に巨大風車が数多く建設された。取材に応じた漁業者はこう述べた。「ここはけっこう魚がとれる場所だ。だから定置網を移動したくなかったけれども……」。
秋田県沖に建ち並ぶ風車は、いずれも沿岸近くの海底に杭を打って固定されている。漁場と重なる。秋田県沖の巨大風車について、今年1月7日と4月13日の『毎日新聞』はこう記した。洋上風力の受け入れ賛否をめぐって漁師は揺れた。「おれたちの浜(海)を取られてしまう」と3分の1近くの漁師が反対した漁協もあった。しかし「魚がとれなくなる心配はあるが、風車が建って補助金をもらいながら漁をする方がプラス」と説得され、賛成に傾いた、と。カネと接待による懐柔である。
◆危機に瀕する沿岸漁業
梅津勘一さんは「上意下達の鳥海山沖洋上風力発電」(本誌13ページ)でこう書いている。「洋上風力発電は、もはやエネルギー問題ではない。利権と不正を生む巨大ビジネスであり、地方自治、民主主義の形骸化が問われている」「沿岸漁業は、大型風車の間を縫って行うことになり、従来どおりの漁ができなくなることは明白である」。同感である。
洋上風力発電の推進は沿岸漁業を危機におとしいれている。日本の食料自給率はますます下がる。自然や景観の破壊も進む。
風力発電は天気まかせだ。風が吹かないときは火力発電を稼働させなければならない。したがって風力発電は二重投資になる。この点はメガソーラーも同じだ。電気代はますます上がる。