トップ ページに 戻る

三番瀬で人工干潟造成計画が再浮上

~市川市が計画~

千葉県は三番瀬での人工干潟造成計画を2016年に中止した。三番瀬保全団体が15年にわたってくりひろげた反対運動の成果である。ところが、こんどは市川市が人工干潟造成計画を打ちだした。予定地は同市塩浜2丁目護岸の前面海域である。

(文・写真/中山敏則)
市川市塩浜2丁目の階段護岸。市川市はこの護岸前で人工干潟の造成を計画している

市川市が発表した人工干潟造成のイメージ

◆計画の見直しを求める意見が相次ぐ

市川市が昨年8月に発表した人工干潟造成計画の規模は0.5ha(幅100m×奥行き50m=5000㎡)である。

三番瀬7団体が昨年10月31日におこなった交渉で市川市はこう述べた。

「JR市川塩浜駅の南側(約11.2ha)で第1期の街づくり計画を進めている。にぎわいの場の創出が目的だ。その前面海域で人工干潟をつくれば多くの方が訪れ、にぎわいの創出に資する」

「塩浜地区街づくり計画」は思うように進んでいない。市は基本方針を2005年6月に策定した。その後18年もたつのに、ほとんど進まない。第1期は土地区画整理事業が終了したのに、現地は草ぼうぼうだったり、道路が通行止めになったりしている。そこで、人工干潟造成を「にぎわいの街」創出の起爆剤にするという。三番瀬の自然環境を保全するという視点はない。

昨年11月25日、千葉県が三番瀬ミーティングを開催した。三番瀬関連事業に関する意見交換が目的である。発言者11人のうち6人が人工干潟造成計画の見直しを市川市に求めた。

私は、兵庫県明石市の大蔵海岸で起きた人工砂浜陥没による女児死亡事故を例にあげ、計画の見直しを市川市に強く求めた。人工干潟造成の予定地は水深の深い澪筋(みおすじ)となっているからだ。県が同じ場所で人工干潟造成を計画したが、砂の流出で維持管理費が莫大になるとして計画を中止した。

人工干潟造成計画の見直しを求める市川市長あて要望書を秋本賢一・行徳支所長(右)に手渡す市川三番瀬を守る会の谷藤利子会長=2023年10月31日

◆民間企業だったらこんな計画はボツになる

市川市民のMさんはこう発言した。

「市川市の今年度の財政規模は1700億円ぐらいしかない。小中学校の建て替えとか、公共インフラ施設の整備が進まない状況だ。そんな状態で人工干潟を整備し、それを維持管理し

ていくだけの能力があるのか。その費用は全部、税金として市民にかかってくる。経費面で見てもズサンな計画だ。民間企業だったら、こんな計画はボツになる。私たちは、市川市民としてこれからも税金を納めていく。それをムダには使われたくない。これまで市川市は全国的にも批判を受けてきた。そのような市政を引き継

いで、いまの市川市役所の人たちがこういう状況だと、非常に不本意である」

三番瀬を守る署名ネットワークの小野安英さんも、人工海浜の「幕張の浜」や「稲毛の浜」を例にあげて計画の見直しを求めた。

「私は千葉市に住んでいる。稲毛の浜は、熊谷俊人県知事が千葉市長だったときに、白い砂をオーストラリアから運び入れた。ところが波浪による侵食によって、白い砂は半年ですべてなくなってしまった。自然に逆らうとそんなふうになる」

これらの発言に対し、市川市はまともな答弁ができない。人工干潟造成計画のズサンさが浮き彫りになった。

千葉県主催の三番瀬ミーティングで発言する小野安英さん。発言者11人のうち6人が人工干潟造成計画の見直しを市川市に求めた=2023年11月25日、千葉県消費者センター
千葉市美浜区の幕張の浜。波浪によって砂浜が大きくえぐられ、高さ2m超の崖ができている。砂をいくら補給しても侵食がつづくため、千葉県はとうとう砂の補給を中止した=2024年1月15日撮影

JAWAN通信 No.146 2024年2月10日発行から転載)