ラムサール条約湿地・谷津干潟の環境を守るために
─千葉県と環境団体が河川高潮対策事業で意見交換─
谷津干潟周辺の河川高潮対策事業をめぐり、千葉県と環境2団体(千葉の干潟を守る会、千葉県野鳥の会)が意見交換会を開いた。3月22日である。両団体は谷津干潟の保全に50年以上かかわってきた。
東京湾の奥部にあった谷津干潟は埋め立て反対運動によって残った。この運動では、「千葉の干潟を守る会」や「千葉県野鳥の会」と周辺の習志野市民が共闘し、多彩なとりくみをくりひろげた。世論を味方につけた運動が実った。谷津干潟の埋め立て計画は中止になる。1993年6月、谷津干潟はラムサール条約湿地に登録された。干潟としては日本初の登録だった。
千葉県の河川整備課は、谷津干潟周辺の3つの河川で高潮対策事業を予定している。二級河川の高瀬川と谷津川、菊田川だ。このうち高瀬川と谷津川は谷津干潟と東京湾を結ぶ河川である。その高潮対策事業は谷津干潟の生態系と密接にかかわる。そのため、事業計画の策定に先だち、千葉の干潟を守る会、千葉県野鳥の会の2団体と意見交換会を開いた。
意見交換会には20人が出席した。県は、河川整備課、河川環境課、千葉土木事務所、葛南土木事務所から7人。地元の習志野市も、環境政策課と都市計画課の職員が4人出席した。コンサルタント会社は2人。千葉の干潟を守る会と千葉県野鳥の会は7人だった。
事業の主な概要は次の2点である。①高潮対策として防潮水門を整備する。②水門閉鎖時の降雨対策として排水機場を整備する。
事業の内容や、事業が谷津干潟の生態系におよぼす影響などについて、2団体のメンバーからさまざま質問や意見が活発にだされた。水門閉鎖が谷津干潟の塩分など自然環境におよぼす影響、排水機場の建設工事に伴う汚濁対策、東京湾と谷津干潟の海水交換や魚類遡上、野鳥飛来への影響などである。
これらにたいし、河川整備課は懇切丁寧に回答した。意見や提案の一部については「検討させていただく」と答えた。こうも述べた。「谷津干潟の生物相に影響がでないよう、年数回程度の高潮時にのみ水門を閉鎖する」「魚類の移動を妨げないよう、工事中は切り回し水路を確保する」「工事に伴い谷津干潟などの自然環境に影響がでないよう、モニタリングを実施する」。
中身の濃い意見交換会となった。