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出力制御で再エネ58万世帯分がムダに

─本年度見通し 原因は太陽光発電の急増─


太陽光発電や風力発電を中心とする再生可能エネルギー(再エネ)の弱点は天候に左右されやすく、不安定なことである。太陽光発電は日が照っていないときは発電しない。その一方で、天気がいい日はいっせいに発電し、需要を大幅に上回る。そのため使い切れずに捨てられている。出力制御(発電制御)である。2024年2月10日の『朝日新聞』と4月22日の『東京新聞』は出力制御が急増していることを大きく報じた。

◆昨年の出力制御は21年比3倍増

『朝日新聞』はこう記している。

〈太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が2023年に急増し、1年間に制御された電力量が全国で計約19.2億㌔ワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。過去最多だった21年の3倍超で、約45万世帯分の年間消費電力量に相当する。再生可能エネルギーを生かし切れていない。〉

『東京新聞』はこうだ。

〈「出力制御」が増えている。本年度もゴールデンウイークなど電気の消費量が減る春や秋を中心に、東京電力エリアを除く全国での実施を見込み、年間約58万世帯分の電気が無駄になる計算だ。〉

出力制御は、電力が余ったさいに太陽光や風力といった再エネの発電をやめたり出力を落としたりする制度である。電力は需要と供給を常に一致させなければ周波数が不安定になる。供給が需要を上回ると一定の周波数を保てなくなり、大規模停電が発生する。

2018年以降、太陽光発電と風力発電の出力制御を必要とするケースが増えている。捨てられる電力は今後さらに増える。経産省などの試算によると、2030年ごろには、再エネによる発電は最大で北海道は49.3%、東北は41.6%、九州は34%が捨てられる恐れがあるという(『日本経済新聞』2022年9月13日)。じっさいに急増している。

◆家計負担も急増

再エネの出力制御量が増えている最大の理由は太陽光発電の急増である。太陽光発電の事業者は、その発電が出力制御によって使われなくても損をすることはない。国民から強制的に徴収する再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)によって面倒をみてもらえるからだ。それが洋上風力発電事業をめぐる汚職事件の原因でもあった。

再エネ賦課金は、太陽光や風力などの再エネを普及するため、電気料金に上乗せされている。2024年度の賦課金は、標準的な家庭(1カ月の使用量400㌔ワット時)で年間1万6752円になる。前年度から約1万円の増加で、4月使用分から適用されている。家計の負担は増える一方だ。


JAWAN通信 No.147 2024年5月10日発行から転載)