三番瀬の人工干潟造成に反対!
─BS-TBS「噂の!東京マガジン」で訴え─
猫実川(ねこざねがわ)河口域は三番瀬の浦安寄りに位置する浅海域である。市川市の塩浜2丁目と同3丁目の地先に広がっている。三番瀬7団体は、この海域で千葉県が打ちだした人工干潟造成計画を2016年に中止させた。15年間におよぶ攻防の結果である。
ところがこんどは市川市が同じ海域で人工干潟造成計画を発表した。2024年7月14日放送のBS-TBS「噂の!東京マガジン」がこの問題をとりあげてくれた。その一部を紹介させていただく。
◆人工干潟の規模は0.5ha
市川市が昨年8月に発表した人工干潟造成計画の規模は幅100m×奥行き50m(0.5ha)。総事業費は3億5000万円~7億5000万円である。市は、三番瀬の一部を蛇(じや)籠(かご)で囲み、そこに航路の浚渫土砂を搬入することによって人工干潟を造るとしている。三番瀬7団体は計画中止を求めている。
◆生き物が死滅 維持管理費も莫大
7団体が反対する理由のひとつは、覆砂によって生き物が死滅することだ。
また、予定地は波の影響を受けやすい場所なので侵食が避けられない。土砂の補給が続くので、維持管理費も莫大になる可能性が高い。
◆県は人工干潟造成を中止
千葉県も同じ場所で人工干潟の造成を計画し、検討を重ねたが、2016年に白紙撤回した。
県は白紙撤回した理由について報告書でこう述べている。いくつかの検討案では、継続的な砂泥の補充が必要であり、生き物が死滅することになると考えられる。また、砂の流出を防ぐ囲いをつくる別の工法では生き物が干潟に入ってくることができない、としている。つまり、干潟を維持することと生き物の定着を両立させることは困難と判断した。
◆人工干潟は造れない
専門家の法政大学人間環境学部・高田雅之教授は、人工干潟の造成は非常に難しいという。
干潟は自然に形成される条件がそろった場所にしか存在しない。高田教授はその条件を5つあげた。土砂と栄養の適度で継続的な供給などだ。ようするにめちゃめちゃ難しいということである。千葉県は、同じ場所で計画した人工干潟の造成をやめた。人工干潟は造れないことがわかったからだ。
◆江戸川放水路に立派な干潟がある
市川市は、市民が海に触れられる場をつくるために人工干潟を造成するとしている。
しかし、同じ市川市内にある江戸川放水路の河口域には立派な自然の干潟がある。人工干潟造成の計画地から車でわずか5分ほど離れた場所だ。
◆江戸川放水路の干潟を活用すべき
江戸川放水路の河口域では、干潮時に広大な干潟が現れる。その広さは、市が計画している人工干潟の10倍以上もある。しかも自然が生み出した天然の干潟だ。
7団体は、自然豊かな三番瀬の一部をつぶして人工干潟をつくるのではなく、江戸川放水路の自然干潟を活用してほしいと市に要望している。
江戸川放水路は、制度上は河川である。しかし河口域の環境や生き物は海(三番瀬)とほとんど同じだ。天気のいい休日は多くの市民や都民が訪れ、潮干狩りなどを楽しんでいる。
7団体は、駐車場やトイレなどを整備し、江戸川放水路の干潟を市民が遊んだり生き物と触れ合ったりする場所にしてほしいと求めている。
◆人集めのために人工干潟を造成
市川市は2005年に「塩浜地区まちづくり基本計画」を発表した。この再開発計画は、JR市川塩浜駅周辺で賑わいの場を創出するというものだ。しかし19年たっても、計画はほとんど進まない。そこで人工干潟を造成し、それを人集めの起爆剤にしようとしている。
◆人工干潟にこだわるのではなく、ほかの計画をたててみたらどうか
江戸川放水路に広がる干潟の活用について番組が質問したところ、市川市はこう答えた。「放水路では数年に一度の大雨時に水害を防ぐため放水しているので、干潟の生態系を維持することは困難である」。この回答について、出演者からこんな異論が相次いだ。「何年に一度か大量の淡水が干潟に流れ込んだとしても、やがて生態系は再生する。実際に、江戸川放水路の干潟もいろいろな生き物が復活している。それが自然の営みであり、自然の力だ」。
総合司会の森本毅郎さんは述べた。「賑わいの場が欲しいという気持ちもわからんではないから、ほかの計画をたててみたらどうか」。