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◇江戸川放水路の干潟は生き物の宝庫

─NHK首都圏ナビ「江戸川放水路干潟」から─


市川市は、三番瀬の一部で人工干潟造成計画を打ちだした。その目的として、市民が海に親しめる場の創出を強調している。

だが市川市内には広大な自然の干潟が存在する。江戸川放水路に広がる干潟である。その豊かさを2024年6月19日放送のNHKテレビ「首都圏ナビ:てくてく散歩」がとりあげた。タイトルは「千葉県市川市 江戸川放水路 干潟の自然観察」。一部を紹介させていただく。

江戸川放水路は江戸川の洪水対策のためにつくられた河川だ。長さはおよそ3キロ。東京湾の三番瀬とつながっている。春から夏にかけては昼間によく潮が引き、干潟が広く現れる。自然に形成された泥干潟は生き物の宝庫となっている。地域で親しまれている自然観察のスポットである。

佐々木洋さんが案内してくれた。佐々木さんはプロ・ナチュラリスト(プロの自然解説者)だ。

「干潟はいろいろな種類がありますが、ここは泥が中心の泥干潟。いろんな生き物がたくさんいて最高の場所です。僕の大切な遊び場でもあるんです」

左がプロ・ナチュラリストの佐々木洋さん

まず迎えてくれたのは、泥の表面をぴょんぴょん移動する魚。この場所のシンボルとなっているトビハゼだ。皮膚呼吸ができるトビハゼにとって、湿っていて栄養豊富な泥干潟は最高の場所という。

「環境省の準絶滅危惧種に指定されている貴重な魚がここには山ほどいる。水の中から陸地へ逃げていくのは、魚なのに水が苦手だからなんです」

トビハゼ

干潟のあちこちで動いていたのがヤマトオサガニ。

「特徴は甲(こう)羅(ら)の形。縦長で長方形っぽい。機織りの一部分のことを『筬(おさ)』という。カニの甲羅がこの筬を思わせるということで、ヤマトオサガニという名前がついてるんです。もうひとつおもしろいのが長い目。水たまりの中では、潜水艦の潜望鏡のように、敵はいないかと周りを見張っているんです」

ヤマトオサガニ

静かに待って観察するのも楽しみのひとつ。ということで、干潟から少し離れた場所で泥の表面を見ていると、ハサミを上下に一斉に動かすカニが!

これが、佐々木さんイチオシのチゴガニのダンスだ。チゴガニはとっても臆病で俊敏。少し近づくと、パッと泥の穴の中へ。だから静かに待つことが大切だという。

「稚児(ちご)は子どものこと。子どものような小さなカニだけれど、踊っているのは全部大人です」

チゴガニ(オス)

ヨシ原付近にも注目。夏の時期だからこそ見られる生き物がいるという。ヒントは大きな鳴き声。佐々木さんが真似をしてくれた。「ゲシゲシケケシケケシ、キキキー」。

ヨシ原の上のほうをじっくり見ていると、いた! オオヨシキリである。ウグイスの仲間で、色は地味だけど、鳴き声は派手。初夏になると、外国から渡ってきてヨシ原に巣をつくり繁殖する。オスが盛んにメスを呼んだり、縄張り宣言のために鳴いているという。

さらに、小魚をねらうコサギも。干潟では野鳥観察も楽しめる。

ヨシ原
オオヨシキリ
コサギ

JAWAN通信 No.148 2024年8月10日発行から転載)