東京湾の原風景が残る盤洲干潟
─国内最大級の砂質干潟─
小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会
事務局長 御簾納照雄
◆豊かな生物相
盤洲(ばんず)干潟は木更津市の小櫃川(おびつがわ)河口周辺に広がる国内最大級の砂質干潟です。千葉県の埋め立て計画によって消滅の危機に瀕しましたが、埋め立て反対運動によって残りました。
盤洲干潟は東京湾でただ1か所、原風景(自然の海岸線)が残っています。大潮の干潮時は水際が見えないほど遠くまで砂地が現れます。その範囲は河口を挟んで海岸十数km、総面積1400ha(標準的なゴルフ場14か所分)にも及びます。
河口には43haの三角州が塩性湿地を形成し、ヨシが生い茂っています。この汽水域周辺は生物相がたいへん豊かで、植物・魚類・底生動物・野鳥など生物多様性の観点からも非常に大切な役割を担っています。
◆干潟の水浄化機能
小櫃川の水質を測定(紙面の都合でCOD:化学的酸素消費量のみ)してみると、最上流で3~4(mg/l)、河口域でほぼ8(mg/l)前後とやや汚れています。三角州の汽水域を測定してみると、その値はほぼ最上流並みであることから、流域の生活排水を含んだ河川水を三角州の植物や広大な干潟が浄化していると考えられます。
河口域周辺では天然のアサリが生まれ育ちます。干潟観察会の時、生まれたばかりのアサリを発見すると歓声が上がります。
東京湾アクアラインが1997年に開通したあと、その橋脚や巨大な人工島「海ほたる」によって海流が変化しました。その影響により三角州の形状が変化し、さらにハママツナやシオクグ、ウラギクなどの希少植物群落がほぼ失われています。こうした現状はとても残念です。
(JAWAN通信 No.149 2024年11月10日発行から転載)