三番瀬に人工干潟はノー
─学習会と街頭宣伝でアピール─
三番瀬は東京湾の奥部に残る貴重な干潟・浅瀬である。面積は約1800ha。
猫実川(ねこざねがわ)河口域は三番瀬の浦安寄りに位置する浅海域だ。三番瀬7団体は、千葉県がこの海域で打ちだした人工干潟造成計画を2016年に中止させた。15年間におよぶ運動の成果だった。
ところが、こんどは市川市が同じ海域で人工干潟造成計画を発表した。7団体は計画中止を求めている。7団体は、日本湿地ネットワーク(JAWAN)加盟の5団体(三番瀬を守る会、千葉の干潟を守る会、県野鳥の会、三番瀬を守る署名ネットワーク、県自然保護連合)と市川三番瀬を守る会、三番瀬を守る連絡会。
市川市を拠点に活動している市川三番瀬を守る会は9月29日、人工干潟計画の学習会を市川市文化会館で開いた。計画の問題点を市民に知ってもらうことが目的だ。参加者は、会場が超満員となる70人超。「人工干潟計画の理不尽さがよくわかった」「三番瀬をこれ以上つぶしてはいけない」「そんなもののために多額の市税が使われるのは許せない」などの声がだされた。学習会のあとは、JR本八幡駅前で宣伝をおこなった。参加者は30人。これらのとりくみに県野鳥の会や三番瀬を守る会なども協力した。
◆生き物は死滅、維持管理費は莫大
市川市が2023年8月に発表した人工干潟造成計画の規模は幅100m×奥行き50m(0.5ha)。
事業費は、造成費だけで3億5000万~7億5000万円。猫実川河口域の一部をじゃかごなどで囲み、航路の浚渫土を搬入することによって人工干潟をつくるとしている。搬入予定航路の底質土からは有害物質やダイオキシンが検出されている。
7団体が人工干潟計画の中止を求める理由のひとつは、航路に堆積した汚泥の搬入によって造成予定地の生き物が死滅することである。また、予定地は波の影響を受けやすい場所なので侵食が避けられない。土砂の補給が続くので、維持管理費も莫大である。
◆根性論で人工干潟実現をめざす
7団体は市川市の担当部署(行徳支所)との交渉でこう質した。
「全国的にみても人工干潟の成功例はない。環境省野生生物課も『人工干潟の成功例は把握していない』と述べている。それでも、市は干潟を造ることができると考えているのか」
支所は答えた
「われわれはそのつもりでがんばっている。そういうつもりでやらないとできない」
人工干潟の成功例があろうがなかろうが、そんなことは関係ない。わわわれは干潟を造れる、というやる気が大事。不利な事実に目をつぶり、人工干潟造成をシャニムニ推し進める──。これが市川市の姿勢である。アメリカを相手に軽率かつ無謀な戦争を始めた旧日本軍幹部と同じ根性論である。
◆「政治生命をかけている」
記者会見で「人工干潟が失敗したらどうするのか」という質問がだされた際、田中甲・市川市長はこう答えた。
「人工干潟造成に政治生命をかけている。反対なら市長選挙で対立候補として出ていただきたい」
これは「人工干潟が失敗したらどうするのか」の答になっていない。はぐらかし答弁である。記者たちも呆れている。
◆残っている干潟・浅瀬の保護が大事
田中市長は、人工干潟造成の目的として「手を加えることによって自然を再生していく」を強調している。しかし、自然の生態系は人智を超えた複雑な営みである。人間の思いどおりにはならない。干潟は、多種多様な生き物が生息するとともに、海水の浄化に大きな役割を果たしている。そのような干潟を人工的につくるのは不可能である。実際に人工干潟の成功例はない。
環境省野生生物課も、千葉の干潟を守る会との懇談でこう述べた。
「人工干潟の成功例は把握していない」
「貴重な干潟や浅瀬をつぶして人工干潟をつくることの必要性は理解できない。人工干潟をつくることよりも、いま残っている干潟や浅瀬を保護することのほうが大事だ」
7団体は市川市に対し、多額の市税をつぎ込んで人工干潟をつくるのではなく、いま残っている貴重な三番瀬を保護することに力を注ぐよう求めている。