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有明は今、夜明け前

豊かな諫早湾と地域を創る会 大島弘三

1.経過

二つの「確定判決」

その1:2010年福岡高裁「3年間の猶予のあと、5年間の全面開放を命ず」。被告の国は控訴せず、確定。
その2:最高裁、国が求めた「2010年福岡高裁の確定判決の強制執行を認めない」。国の請求異議を認める。

この判決によって、メディアは「非開門で決着」と報道しました。

しかし判決文を検証すれば、確定した「開門」の義務は残る。ただし現時点では開門の強制執行は求めない──。というのが正しい解釈です。

福岡高裁は2021年に「和解協議に関する考え方」を示し、原告、被告の両者に和解を勧めました。「統一的、総合的かつ抜本的に解決するためには話し合いによる解決の外に方法はないと確信している」と述べています。これに対し、国は「和解」の協議も拒否しました。

2.「お前たちは黙って従え」が農水省のポリシー

「『開門によらない』有明海再生が最良の方策と考えている」。農水大臣は、そのように記者諸君に話しました。私たちは農水省の出先機関、九州農政局に「懇談の場」を求めましたが、「対面の話し合いには応じない」と断られました。

「オレたちが正しい。お前たちは黙って従え」。これが彼らのポリシーです。

高札を立てて、「お上の言うととおりだ」。江戸幕府の時代ではありません。

3.諫早は漁獲量激減とノリの色落ちに苦悩

先日、名古屋市で「国内湿地交流事業」をしているメンバーの方々が諫早湾を訪れました。

名古屋といえば藤前干潟です。40年ほど前、ゴミで干潟を埋め立てて土地を造る開発工事が計画されましたが、市民が立ち上がり撤回させました。一方、諫早湾は干拓事業が始まりました。藤前はラムサールに登録。一方、諫早は漁獲量激減とノリの色落ちに悩まされています。

名古屋市は毎年、市民を公募し「国内湿地交流」を重ねています。昨年は東京湾の三番瀬に行ったそうです。今年は15人が参加。藤前の活動家はもちろん、学生も5人いました。

4.高級二枚貝「タイラギ」が獲れなくなった

豊洲の魚市場で高値で取り引きされていたタイラギは、20年前から有明海で獲れなくなりました。最初は稚貝が泥の中から頭を出していました。しかし夏場の赤潮や高温でいなくなり、絶滅です。今や有明の海底は宮崎駿の「腐海」となりました。

そこには再生の道はないのか? それは次世代に託しましょう。今は夜明け前です。

JAWAN通信 No.150 2025年2月20日発行から転載)