メガソーラーによる環境破壊が止まらない
メガソーラー(大規模太陽光発電所)による自然破壊や景観破壊は下火になる気配がない。
◆自然・景観の悪化が各地で社会問題化
「固定価格買い取り制度(FIT)に群がった再生可能エネルギー事業者により、国内ではソーラーパネルの設置競争が過熱している。環境破壊や景観の悪化など各地で社会問題となっている」──。これは2024年12月2日付『毎日新聞』の「検証」記事である。釧路湿原や阿蘇を事例にあげ、こう記している。
《釧路湿原国立公園(北海道釧路市、釧路町、鶴居村、標茶町)を見下ろす高台に上がると、異様な光景が広がる。自然が残る湿原周辺がソーラーパネルで埋め尽くされようとしていることが分かる。(略)国立公園に隣接してバッファーゾーン(緩衝地帯)の役割を果たしている湿原周辺の市街化調整区域には「氷河期の生き残り」と呼ばれる絶滅危惧種のキタサンショウウオなど数多くの貴重な動植物が息づく。そこにソーラーパネルが設置されれば、絶妙なバランスで保たれていた生態系への影響は計り知れない。》
《熊本県が世界文化遺産登録を目指す「阿蘇」。1000年前から続くとされる野焼きで保たれてきた阿蘇の草原にも、2015年ごろからメガソーラーの設置が相次いでいる。今年6月現在、阿蘇市と周辺では計20力所でメガソーラーが稼働し、新たな進出計画も進行中だ。世界文化遺産登録のためには景観の保全が必須となる。県や地元自治体でつくる阿蘇世界文化遺産登録推進協議会は23年2月にガイドラインを策定し、草原へのメガソーラー設置を原則禁じた。展望地から見える場所への設置を避けるよう求めているが、ガイドラインに法的拘束力はなく、抑止効果を期待するしかない状況だ。》
◆地域住民とのトラブルが後を絶たない
2024年12月15日付『東京新聞』の「こちら特報部」も、メガソーラーによる環境破壊や景観破壊が全国各地で問題になっていることを大きく報じた。
《メガソーラー整備計画は各地で問題になっているようだ。NPO法人「環境エネルギー政策研究所」(東京都)の山下紀明主任研究員が新聞報道を基にまとめた調査によると、2012年7月~今年2月の全国紙や地方紙を調べた結果、太陽光を巡るトラブルは全国で解決済みを含め198カ所で確認された。メガソーラーを原因とする分は146カ所で過半数を占めた。都道府県別では多い順に長野の39カ所、山梨の13カ所、三重、静岡の各10カ所と続く。山下氏は「日射量が多く使われていない山林が多い地域が狙われた」と話す。(略)問題別では、自然災害の懸念が112カ所と最多。景観悪化の懸念が88カ所、生活環境悪化(反射光、飲み水汚染など)と自然破壊の懸念が各61カ所あった。(略)「環境影響評価に入れば工事前でも買い取り価格が維持される。事業者が住民に反対されても手放そうとせず問題が長期化している地域もある」と話した。》
◆補助制度が再エネの無駄づかいと環境破壊を助長
メガソーラーは夜間や雨の日は発電できない。その一方で、太陽が照っているときは一斉に発電するので、膨大な余剰電力が捨てられている。出力制御である。それを解決するためには蓄電池の活用が必要だ。日中時間帯に発電した電力を蓄電し、夕方以降に放電して市場に供給する「時間シフト」を導入するということである。
ところが、再エネ補助制度が蓄電池の活用を妨げている。FIT事業者は、出力を制御されても市場価格が下がっても、固定価格で買い取ってもらえるからだ。その原資は、国民から強制的に徴収している再生可能エネルギー発電促進賦課金である。そのため、FIT事業者は大量の余剰電力を供給しつづけている。
2023年10月13日の『日本経済新聞』はFIT制度を喝破する記事を載せた。
《FIT制度は、現在の日本の高頻度の出力抑制とそれが生む再エネの無駄遣いの大きな原因だ。巨額の財政支出と無駄な出力抑制を続ける現状の電力価格対策は、エネルギー安保にも、脱炭素にも、停電抑制にも役立たない。電力価格対策は、蓄電池活用への障害の除去と、低所得者所得補助を中心に再構築すべきだ。》
まったく同感である。ところが、市民団体や知識人などの多くはこうした実態に目をつぶり、相変わらず再エネを手放しで礼賛である。戦時中の日本国民は、政府や軍部、メディアのプロパガンダに乗せられ、アメリカとの戦争を熱狂的に支持した。それと同じではないでしょうか。
(中山)