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船橋市立小学校の三番瀬授業と 「はくぶつかん」 に感動

三番瀬を守る連絡会 代表世話人 中山敏則

 (2025年)11月6日、船橋市立八木が谷(やぎがや)小学校の三番瀬授業で話をさせていただきました。テーマは「三番瀬の歴史と私たちの思い」。対象は3学年の全3クラス90人です。

   ◇       ◇

◆三番瀬授業の目的

 船橋市には市立小学校が55校あります。3年生はすべて、ふなばし三番瀬海浜公園内の「ふなばし三番瀬環境学習館」(船橋市の施設)で校外学習を毎年おこなっています。目的は社会と理科と総合的な学習です。

 八木が谷小学校の3年生も、10月3日に「ふなばし三番瀬環境学習館」を訪れました。三番瀬の干潟でさまざまな生き物も観察したそうです。

 しかし、この環境学習館は「三番瀬はどうして残ったのか」という歴史は展示していません。千葉県は、残った三番瀬の干潟をすべて埋め立てる計画を1993年に打ち出しました。この計画は埋め立て反対運動によって中止になりました。ところが、そうした歴史は展示していないのです。

 そこで、同校の先生から、「三番瀬の歴史をテーマにした小学3年生の授業に来ていただき、児童の質問に答えてほしい」との依頼をいただきました。私がホームページ「三番瀬を未来に残そう」などで三番瀬保全運動の歴史や現在の動きなどをくわしくとりあげているからです。

 この日おこなわれた三番瀬授業の正式名称は「三番瀬ゲストティーチャー授業」。目的は2つです。

①三番瀬に以前からかかわる方から話を聞き、三番瀬の歴史や現状を知るとともに、守ってきた人々の思いを知る。そして、これからの三番瀬に対する自分なりの考えを持つ。

②「八木が谷三番瀬はくぶつかん」のプレオープンをおこない、自分たちの思いを伝える。

◆「三番瀬はくぶつかん」に感激

 最初に、この日プレオープンした「八木が谷三番瀬はくぶつかん」を児童たちに案内していただきました。

 この「はくぶつかん」はどれもすばらしい出来です。感激しました。たとえばこんな点です。

(1)カラシラサギは千葉県レッドデータブック(絶滅危惧種)のAランク(最重要保護生物)に指定されている鳥です。三番瀬でもめったに見ることができません。私もこれまで2回しか見たことがありません。八木が谷小学校の児童たちはそんな超希少種も展示しているのです。驚きました。

(2)アラムシロガイは私が三番瀬で感動した生き物のひとつです。その巻き貝も展示してありました。感服しました。

  私たちはアラムシロガイを「干潟の掃除屋」と呼んでいます。魚などさまざまな生き物の死体を食べてくれるからです。展示ではこう紹介してあります。「昔、干潟の近くに住んでいた人はこのアラムシロを『死人貝』とよんでいた」。勉強になりました。

(3)アカエイが砂の中にもぐったり、砂の中からでてくる様子をあらわした展示物も感動でした。おもしろくて楽しい展示です。アカエイは、三番瀬で最も危険な生物とされています。私たちが三番瀬市民調査をおこなうときもいちばん注意している危険生物です。

(4)滑車ひもを引っ張ることによって干潮と満潮のしくみを説明する展示もユニークです。感心しました。

◆児童の質問

 「八木が谷三番瀬はくぶつかん」を見学したあとは視聴覚室で三番瀬授業です。

 最初に、映像を使って私が話しました。テーマは「三番瀬の歴史と私たちの思い」。骨子は次の4つです。

①自己紹介

②三番瀬の歴史と私のかかわり

③これまでの活動内容

④みなさんに伝えたいこと

 私がアメフラシの映像を映したら、「アメフラシだ」と言ってくれた女児がいました。アメフラシはウミウシの仲間であることや、さわると防御用に紫色の汁を出すことも知っていました。これにはびっくりです。

 八木が谷小学校は三番瀬から遠く離れているので、児童たちは三番瀬の生き物をあまり知らないのではないかと思っていました。意外でした。アメフラシにくわしいとはプロ級です。

 話のあとは児童からの質問です。「中山さんに質問したい人は手をあげてください」と先生がよびかけると、何人もの児童が手をあげました。驚きました。

 時間の関係で10人が質問しました。質問内容はこうです。

①昔は三番瀬にいたが今はいない、という生き物はいますか。

②なぜ東京湾の水は汚(きたな)くなったのですか。

③昔の海の色はどんな色だったのですか。

④三番瀬はラムサール条約に登録されていますか。

⑤好きな生き物はなんですか。

⑥三番瀬の埋め立てをめぐって争いが起きた理由はなんですか。

⑦ふなばし三番瀬環境学習館はなぜできたのですか。

⑧どんな野鳥が好きですか。

⑨「八木が谷三番瀬はくぶつかん」の展示の中で、楽しかったものや心に残ったものは何ですか。

⑩ひもを引っ張ることによって干潮と満潮の現象がどうして起こるかをあらわした展示はどうでしたか。

 どれもレベルの高い質問です。小学3年生の質問とは思えません。感動しました。

 たとえば「三番瀬の埋め立てをめぐって争いが起きた理由はなんですか」と質問した児童について、先生があとでこう話してくれました。

「ふだんは、そのようなむずかしい質問をする子ではありません。中山さんの実体験にもとづいたお話があったからこそ、子どもの考えが大きく広がったのだと思います」

 身に余る言葉をいただき、感激しました。

◆小学校からも富士山が見えた

 授業が終わったあとも、何人もの児童からいろいろと話しかけられました。

 私は話の中で、三番瀬の船橋側が国土交通省の「関東の富士見百景」に選ばれたことを紹介しました。船橋側から撮った富士山の写真を見せてです。

 ある女児はそれに興味をいだいたようです。

「八木が谷小学校からも富士山が見えます」と言って、富士山が見える場所を案内してくれました。4階の廊下の一部から富士山とスカイツリーが隣り合わせの状態でばっちり見えます。これにも感激しました。

 私にとってはかけがえのない経験となりました。


「八木が谷三番瀬はくぶつかん」 の展示物

 船橋市立小学校3学年の児童は11月6日、「八木が谷三番瀬はくぶつかん」をプレオープンさせました。空き教室を利用してです。魚や貝類、野鳥など、いくつものグループに分かれ、三番瀬で見られるさまざまな生き物や干潮・満潮のしくみなどを紹介しています。どれもユニークで、たいへんすぐれた展示です。その一部を紹介させていただきます。 

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八木が谷小学校の3年生(3クラス、90人)は10月3日、校外学習で「ふなばし三番瀬環境学習館」を訪れました。干潟ではカニやヤドカリなどの生き物を観察。学習館のスタッフからカニを捕まえるコツを教わり、一生懸命探したそうです。左手前はマガキとオキシジミの紹介。右後方は、同環境学習館の紹介や、日本の代表的な干潟や湿原などを地図であてるクイズ。
三番瀬にすむさまざまな底生生物(左)や干潮・満潮が起こるしくみ(右)を紹介
干潮と満潮のしくみを説明した展示。滑車ひもを引っ張ると海水面がどんどん上昇し、説明文が隠れます。
左からアラムシロガイ、ミズクラゲ、ボラ、ハゼ。三番瀬ではどれもおなじみの生き物です。私たちはアラムシロガイを「干潟の掃除屋さん」と呼んでいますが、展示はこう紹介しています。「昔、干潟の近くに住んでいた人はこのアラムシロを『死人貝』とよんでいた」。勉強になりました。
ミユビシギとダイゼンを紹介。三番瀬ではおなじみの渡り鳥です。
アカエイが砂の中に隠れたり、砂の中からでてくる様子をあらわしています。アカエイは、その名のとおり赤っぽい色をしています。背側は赤褐色か茶褐色で、背面に目があります。アカエイは尾に鋭い毒針を持っていて、三番瀬では最も危険な生き物とされています。私たちが三番瀬で市民調査をおこなうときもいちばん注意している危険生物です。おもしろくて楽しめる作品です。感心しました。
それぞれグループが展示物を案内してくれました。
三番瀬や干潟に関する出版物の展示



JAWAN通信 No.153 2025年11月30日発行から転載